利便性、住環境、安全性。優先すべきは?

つまり、土地の価格は「利便性」をベースに「住環境」「安全性」の3要素が加味されたものと考えられ、土地の価格差には何らかの理由があると考えるのが妥当だ。

であれば、住宅購入を考える場合にはその物件の価格が妥当か、3要素のうちのどれが優先されているのかを、土地の価格を周囲と比較検討して考えることで推測する必要がある。土地価格自体は安いのに、トータルな物件価格が周囲と比して高いのだとしたら、何か、その要因があろうし、逆も同様。複数の物件を比較する際にももちろん役に立つ。

その際には同時に、自分たちが3つの要素のうち、どれを優先するのか、予算との兼ね合いはどうかなども検討すれば、自分たちにとってのベストが選べるだろう。

多くの人は例えば、港区南青山4丁目と聞いただけで良いイメージを持つが、実際の南青山4丁目には目黒区上目黒3丁目同様、道一本隔てて価格が高い土地もあれば、低い土地もある。地名、イメージだけで本当はそこまでの価値がない場所を選んでしまわないよう、路線価図を上手に活用していただきたいものである。

ちなみに、路線価を決める際、実は“地盤”その他は勘案されていない。だが、人が不動産取引をする場合、「利便性」「住環境」「安全性」を必ず考慮する。それが結果として、勘案されていないはずの要素までが反映された結果になっているのは実に面白い。

中川寛子
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。