土地の価値。鍵は利便性にあり
今回のテーマは不動産の「資産価値」。住宅は建物と土地から成るが、そのうち、資産価値を左右するのは土地。場所が良ければ、建物があまりたいしたものでなくても価値を維持し続けるケースすらあるほどなのである。
分かりやすい例は東京都品川区から港区にかけて広がる、島津山、池田山などの、いわゆる城南五山エリアに建つ、神奈川県に本社があるN社のマンション。N社は66平方メートルで直床(じかゆか)の4LDKを平気で建築するようなデベロッパーだが、同エリアにある物件だけは大きく下落していない。物件自体があまり良くないとしても、土地にそれ以上の価値があり、結果、価格下落が抑えられているのである。
では、土地の価値はどのような要素から成り立っているのか。参考になるのは「路線価」である。ご存知のように土地の価格には公示地価、基準地価、路線価、不動産価格指数など用途、目的に応じて複数あるが、路線価は税金を算出するためのベースとなる価格。相続税などのためのものと、固定資産税のためのものの2種類があり、前者は毎年、新しい価格が公表されている。
しかも、価格が表示される地点が限定される公示地価、基準地価と違い、道路1本ずつに価格が設定されており、路線価図として地図化されているので、複数の地点を比較しやすいという特徴がある。ある道路沿いと、近隣の道路沿いで価格が違うとしたら、その差を現地で探ってみれば、土地の価格が決められる仕組みが分かるというわけである。そのため、他の不動産価格算定の方法より、実際に住む人の感覚で考えられるというメリットがある。
さて、路線価図のうち、相続税などの算出に用いる路線価図は国税庁が公開しており、誰でも簡単に利用できる。ここでは例として東急東横線中目黒駅周辺を見てみよう。
ひと目で分かるのは駅に近い場所ほど価格が高いということ。駅の向かいに再開発で生まれた、タワーマンションを含むエリアがあるのだが、そのもっとも駅に近い場所の路線価は1平方メートルあたり220万円で、このエリア最高値。そして、駅から離れるに従って、価格は下がり、駒沢通りとの角に来ると146万円に。「駅からの距離=利便性」が価格を左右していることが分かる。駅からの距離だけではなく、道幅、沿道の繁華さも要因となっており、商店街のある通りと、並行して走る細い、あまり店舗のない通りでは価格差が生じている。