いま、子育てをしながら装備品生産業務部で働く彼女の仕事は、機体の部品の信頼性管理というものだ。各部品を分析して不具合や課題を見つけ出し、メーカーに対して改善点を伝えるのが主な業務である。航空機に使用される機器の情報を「現場」からフィードバックし、より良いものに変えるという意味でも重要な仕事だ。
この部署にいると、彼女は整備士としての経験が活かされていると感じる。航空機の「現場」がさまざまな人々に支えられていることを知り、それが「自分自身が今度はその1人となった大きな使命感」につながるからだ。
「異動や育児で職場が変わったときは、これまで積み重ねてきた経験をまたゼロから積むのか、と誰もが悔しい気持ちにもなるでしょう。私も最初、現場を離れたときはそんな思いも抱きました。でも――」と彼女は言った。
いまでは現在の仕事が整備士としての5年間と確かに連なり、どれもが巨大な機体を動かすために欠けてはならない役割を果たしていることを、実感として理解できるようになった。それは「いつかは技術部のリーダーになりたい」と語る彼女にとって、働くことのやりがいを抱かせてくれる実感だ。
「どんな職場にいても、仕事の知識というのは知れば知るほど楽しくなる。全力で取り組もうとするからこそ、今までは気付かなかった原石をたくさん見つけることができる。それは子育てでも仕事でも同じだなぁ、と結局は思うんですよ」