進む連帯意識の低下、その時弱者は……

投票を月曜に控えた勝負の週末、サンドラは同僚たちを訪ねてまわる。それぞれがさまざまな事情を抱え、家計も一様に窮迫している同僚たち。「私の立場に立って」と言うサンドラに対し、彼らもまた、「じゃあ、僕の立場も考えてみてくれ」と返す。その中には、契約社員として雇われたアフリカからの移民の男性もいる。リュックさんは言う。「ベルギーには北アフリカや中央ヨーロッパ、それに、幼少期に養子縁組されてやってきた30~40代のアジア系移民が大勢います。また、1~2カ月の短期雇用が非常に増えているんです。そうなるともう、解雇する・しないの問題ではなくなりますよね。短期雇用が増えると正規社員が減る。するとどうなるかと言えば、『連帯』という意識がなくなるのです。短期間しか一緒に働かない者同士、連帯意識を持つのは難しいですから」

うつを克服し、復職を目指すサンドラに突き付けられた解雇通告。経営者とサンドラ、そして同僚との関係が、EUの中小企業の現状をあぶり出す。

連帯、つまり相手の立場に立って共に闘うこと。

「あなたの助けを必要とする人が連帯を求めているが、それに応じれば自分は1000ユーロという大金を失うことになる。つまり、連帯を求める人の立場に立つということは、自分が何かを諦めることなのです」

サンドラは自分と同じく苦境にあえぐ同僚たちを責めない。「たとえ相手がボーナスを諦めてくれなくても、彼らとのやり取りを通じてサンドラは変わっていきます」と兄のジャン=ピエールさんは言う。「最初彼女は、他人にとって自分は存在価値のない人間だと思っているような女性として登場します。そんな脆弱な女性が同僚たちと交渉していくことで、自身も変わっていくし、相手も変わっていくのです」。図らずもサンドラ自身が、連帯の構築を促す歯車になっていく。「この映画は、脆弱に見える1人の女性が変化していく、弱者礼賛の物語でもあるのです」と両監督は言う。

映画『サンドラの週末 deux jours, une nuit』

監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジョーネ、オリヴィエ・グルメ、モーガン・マリンヌ
配給:ビターズ・エンド
2014年/ベルギー=フランス=イタリア合作/95分
5月23日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
(c)Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Televisions, belge) -France 2 Cinema