つらい不安やうつに対処するにはどうすればよいか。スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「身体の中から脳が受け取るシグナルはメンタルを左右している。運動はうつを防ぐために出来る1番重要なことの1つだ」という――。(第4回)

※本稿は、アンデシュ・ハンセン『メンタル脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

「うつ」の反対語とは

あまりにも長い期間(数日ではなく何週間も何カ月も)強いストレスにさらされていると、うつになることがあります。うつという言葉には様々な定義がありますが、基本的には「長期にわたる気分の落ち込み」です。

うつの反対語は「喜び」ではなく、「バイタリティー(生きる活力)」だと言われます。うつになるとまさに失われるものがバイタリティーだからです。誰にも会いたくなくなりますし、何もしたくなくなります。あくまで症状の一例ですがよく眠れなくなり、食欲もなくなります。

後述しますがうつの原因は様々で、程度の差はあれどつらいものです。

なお、「悲しい」という気持ちはうつとは別です。悲しみはとても大事だった何かを失った時に感じる気持ちです。これもごく自然な感情で、他人に愛情を感じるためにもなくてはなりません。悲しみはたいてい時間とともに薄れ、傷痕が残るとはいえ最後には傷は癒えます。

しかし悲しみが薄れないままうつへと発展することもあります。トラウマになった経験にうまく対処できなかった場合もそうです。その場合もやはり自分の感情を言葉にし、安心な状況で信用できる相手とトラウマに向き合うことで和らぐことがあります。

黒い紙の背景に人頭の形をした紙
写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです

ひどい気分のときは誰かに話をきいてもらおう

つらい気持ちを乗り越えることはそうかんたんなことではありません。

脳というのはあきれるほど強力で、不安やうつが何なのか、どういう目的を果たしているのかを理解出来たとしてもひどい気分になることはあります。その場合は誰かに話を聞いてもらいましょう。両親や学校の先生や保健室の先生でも良いでしょう。

周りに助けを求めるのは弱いからではありません。勇気がある証拠なのです。