スターバックスでマーケティング部門を立ち上げる

バブル真っ盛り、広告代理店の仕事は充実していましたが、寝る間もないほど働き、遊ぶという時代でした。退職し、スピードを少し緩めて専業主婦になったわけですが、特段やることもないので、アニュアルレポートなどをつくる会社などのアルバイトをしていました。そんなときスターバックス コーヒーが96年8月に日本に上陸し、3店目の開店のころでしょうか、知り合いの方から「広報とマーケティングを手掛ける人がいないのでどうか」とお誘いを受けました。

初めての打合せが銀座松屋の裏の1号店。お店の空気感や漂うコーヒーの香りは今まで経験したことがなく、ドキドキしたことを鮮明に覚えています。その後、当時の社長の角田雄二さんとお会いし、こんなチャーミングで、プロの商売人の嗅覚をもった方と一緒にビジネスを広げていきたいと思い、参画させていただきました。

マーケティング部門は、シアトルの大学でビジュアルマーチャンダイジングを専攻した22歳の女性と立ち上げました。出店のスピードがものすごく速くて、またもや寝る間もないほど仕事に没頭することになってしまったんです。ベンチャーの立ち上げ時期はやればやるほど手ごたえが感じられます。おかげで生活はそっちのけです。

毎週チームで、出店候補地を回りながら、どういうデザインにし、どんなオープニングにするかを企画していきました。ゼロからのお店づくりで、お客様の反応が直に伝わってくるのでやりがいがありましたね。

当初こそ、お客様の好みに合わせてオーダーを頂いてから1杯ずつ淹れるスタイルが目新しくて、ファストフード店と思われていたお客様から「次のアポイントに遅れてしまう」といった苦情があったこともありましたが、徐々に待ち時間にもゆったりとコーヒーの香りや音楽を楽しんでいただけるスタイルが定着し、、何よりも豆に抽出の仕方にこだわったコーヒーの美味しさを喜んでもらえたのがうれしかったですね。コーヒーがちょっと苦手な女性の方も濃厚なミルクやチョコレート、ホイップクリームが入ったドリンクで新しいコーヒー体験を楽しまれ、それが口コミで広がってスターバックスが全国で認識されるようになったと思います。