おお、女がいる!

JR東日本を志望したのは、そもそも旅行が好きだし、人と接したり生活に密着したりしている仕事に就きたいと思っていたからでした。そんななか、国鉄から民営化されたばかりで注目が集まっていたJR東日本に、ミーハーな気持ちもあって惹かれたんです。

いまでこそ鉄道会社で女性が働いているのは当たり前ですが、私が入社した平成2年はJR東日本で女性総合職を採用し始めてまだ2期目、完全な男職場でした。同期で女性は40名。約8万人いた社員の中で、1期生と合わせても100名足らずですから、とにかくめずらしがられましてね。たぶん私たちよりも、年配の男性社員のカルチャーショックの方が大きかったでしょう。「おお、女がいる」と隣の部屋から見に来るくらいで、まるで天然記念物のような扱いでしたから。

まだ社内には着替えをするための女性専用の設備なども完備されておらず、私たちの異動に合わせて慌てて作っている状態。20年程度前はそのような職場だったのですから、車掌や運転士、保線や電力などのメンテナンス部門にも女性が増えてきた今と比べると隔世の感がありますよね。

私は入社してすぐに東京駅の旅行専門のカウンターに配属され、お客様からの旅行の相談を承る仕事をすることになりました。そこでの日々は学生時代に思い描いていた通りのものでしたから、とても楽しい日々を送っていました。でも、キャリアの転機となったのは、やはり八王子駅や国分寺駅の助役として駅のマネジメント業務に携わるようになったことです。

助役というのは駅長の補佐をする仕事です。全ての最終責任者である駅長に対して、駅の日々の運営責任者です。私は窓口責任者としてお客様対応を担当することになりました。八王子支社で女性が助役になるのは初めてのことでした。

JR東日本 立川車掌区区長
久保素弥子
(くぼ・すみこ)
山梨県出身。1990年入社。東京駅、広報課などの勤務を経て、2000年に八王子駅、続いて国分寺駅の助役に。その後は人事関係、お客さまサービス関係の業務にも携わり、11年中央線国立駅長に就任。14年5月より現職。大学講師の夫と2人暮らし。

稲泉 連=構成 向井 渉=撮影