親の“まさか”も考えておこう

30代のうちから相続を意識してほしい理由はもう一つあります。あまり考えたくないことですが、もし今、親に万一のことが起きたら――

私の友人の父親は、64歳のときゴルフ場で突然倒れ、そのまま亡くなりました。母親は財産の管理をすべて父親に任せていて、何も把握していなかったそうです。一人娘の友人が実家を必死で探しても、預金通帳や不動産の権利証などが見つからず、自宅と地方の実家を何度も往復して大変だった……と嘆いていました。

「うちの親はまだ若くて元気そのもの。まさかそんなこと起きるはずない」と思う人も多いでしょう。でも、何の準備もないままに、その「まさか」が起きたときこそ、一番大変です。

そんな「まさか」に備えるには、実家の財産をある程度、把握しておくことが大切。といっても、親に向かって「うちの財産、どうなってるの?」なんて聞きづらいですよね。

この夏は、そんな話をさりげなく始める絶好のチャンスです。「お父さん、来年から相続税が上がるんだってね」と切り出してみましょう。そこで「そうらしいね」といった反応があれば、お金の話に持っていきやすいはず。このほか、資産運用や地価上昇の話、オレオレ詐欺の話などからお金の話を始め、チャンスを見て「ところで、うちはどうなってるの?」という話につなげる、という作戦です。

この夏、実家に帰ったら、家族でお金の話をしてみてはどうでしょう。

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。