異常が確定した人の大半は、中絶を選択
NIPTは、データを公開したことでも注目された。特に「染色体異常が確定した人の大半が人工妊娠中絶を選んでいる」という事実は衝撃を呼んだ。今回の報告でも、集計の対象になった7740件中142例(2%)が陽性という結果を受け取り、110名は陽性が確定して人工妊娠中絶を選んだ。そうしなかった人の多くはその後の羊水検査で疑陽性と判明した人や自然流産をした人などで、染色体異常を受け容れて妊娠継続を決めたのは1名のみだった。
これは、年間約100万人にのぼる日本の妊婦さん全体が「障害があれば産まない」と考えているという意味ではない。日本には障害があっても産みたい人はたくさんいるが、そう考える人は一般的に検査を受けない。
しかし、予約の手間や約20万円という高額な検査料が受けない理由になっている人もいるので、これからNIPTが身近になってくると受ける人は増えるだろう。今の時点で、出生前診断にはこうした重い事実があることが明らかにされたことはよかった。
この新しいタイプの検査が登場する以前から、出生前診断はいろいろな種類がおこなわれてきた。代表的な確定診断の「羊水検査」は、1970年代から国内で実施されてきたが件数などの報告義務はない。妊婦のお腹に針をさして羊水を採取し、浮遊している胎児細胞を調べるこの検査は、0.3%程度の流産リスクがあるものの、ほぼ正確なことがわかる。現場の声によると、陽性とわかった人のほとんどが人工妊娠中絶を決断してきた。