働かないのではなく、働く必要がない

企業における働かないおじさんも同じです。役割が与えられていないのか、そもそもやる気がないのか、やる気はあって役割もあるのだけれど無能なのか。いろんなケースがあるでしょう。発生原因? それは、ケーキ屋さんのオーナーシェフのように「できる人」(あなたのことです)が周囲にいてくれることに尽きます。彼らは働かないのではなく、働く必要がないのです。無駄に動き回ると「できる人」の邪魔になることぐらい彼らも知っています。

企業が無事に存続している限り、従業員全員が懸命に働いて給料と役割に応じた成果を上げる、なんて不要な理想論です。不平不満ばかりで周囲の雰囲気を悪くするような人は問題だけど、そこそこ働くふりをしながら朗らかに生きている人を責めてはいけません。本人だってわかっていますよ。「オレは実質的には何も働いていない」と。それでも人は毎日をやり過ごしていかねばならないのです。

無害無益な人を許してあげましょう

明日は我が身、なので働かないおじさんに思わず寄り添ってしまいました。でも、「本人は忙しく働いているつもりだけど部署にとっては有害無益。しかも自分を若いと思っている中年」よりも、単なる働かないおじさん・おばさんのほうが100倍ぐらいマシだと思いませんか。

前者はいつも威張っていて不機嫌です。こちらが隙を見せるとパワハラやセクハラをしてきます。どうしてこんな中年になってしまうのかといえば、「働かないおじさん」と呼ばれて軽蔑されるのが嫌だからですよ。無能と老いを必死で隠そうとして、その不自然さが体内で悪いものに化学変化して吹き出してしまうのです。

それに比べれば後者は「無害無益」な存在ですよね。稼ぎ頭のあなたががんばって働いて彼らを無事に定年させてあげてください。働かない人たちの分まで働きたくない、というならば会社員を辞めて独立しましょう。ひとり身は気楽だけど寂しいものですよ。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/