ルーティンワークを繰り返してやっと「わかって」きた
この15年前の自分を振り返ると、最初は何も分からずに働いていましたね。何しろ大学の専門は電気工学ですから、ロケットがどのように打ち上げられるのかも知らないし、エンジンの構造や飛行制御の仕組みも全く理解していませんでしたから。
それにロケットの開発現場で交わされる専門用語がまず分からないんです。航空宇宙の世界では電子機器のことを「Avionics」と言うのですが、そんな基本的な用語も純粋に電気工学だけを学んできた私にはさっぱりで、それが先輩への初めての質問でした。そうしたら「AviationとElectronicsが合体したものだよ」と教えられて――。
なので、最初の2年間は黙々と周りの会話を聞き、分からないことは質問して理解し、それでも分からない場合はこっそり聞いて本を読んで勉強する日々でした。
ロケットの機体や部品をつくる工場での検査の立ち合い、不具合の報告、会議のセッティングや契約資料の作成……。
そのうち試験場にも1人で行くようになって、上司に報告する機会や他部署の人からの質問に答える機会も増えていきました。そうしたルーティンワークを繰り返すうちに、4年目くらいから急にいろんなことが分かり始めた、と感じるようになりました。
1976年東京都出身。立命館大学を卒業後、1999年、JAXAの前身である NASDA(宇宙開発事業団)に入社。H-IIA/H-IIBロケットの搭載電子機器の開発に携わる。2012年より現職。
稲泉 連=構成 向井 渉=撮影