「かわいそう」と思ってはいけない

保育園へのなじみ方は、子どもによってさまざまです。まったく泣かない子どももいますし、数日たってから泣いてしまう子どももいます。朝のお別れは何カ月も泣きとおしたという子どももいます。

それぞれ個性ですので、子どもの気持ちがすむまで待つしかありません。

このときに親として気をつけたいのは、親自身が預けることをかわいそうと思わないことです。親が不安や迷いを感じていると、子どももその気持ちを敏感に感じて不安になってしまうことがあります。

まずは、親が保育者を信頼し、それを態度に表したほうがいいでしょう。子どもの前で親と保育者がなごやかに話したりしていると、子どもも「この人は大丈夫なんだ」と感じてくれるかもしれません。

いったん保育者に子どもを渡したら、明るく「バイバイ」し、さっと立ち去りましょう。親が見えなくなれば、保育者は子どもの気持ちを切り替えるように働きかけることができます。

まだ言ってもわからない年齢でも、「ママは会社行くけど、夕方に帰ってくるからね。保育園でいっぱい遊んで待っててね」と子どもに話しかけていたというママもいましたが、そんな気持ちも大切だと思います。

保育園のようすが心配なとき

保育者と保護者との信頼関係は、子どもが保育園に慣れた後も大切です。一緒に子どもの成長を見守り、協力しあって子どもの生活をつないでいくパートナーとなるからです。疑問に思うことはなんでも聞いてみて、保育者や保育園の意図を理解しようとする気持ちをもつ必要があります。親に信頼されて保育者が安心して保育を行えることも、保育の質の一部といえます。

保育者を信じましょうといっても、どうしても不安を感じる場合はあるかもしれません。

「先生が頼りない」「子どもにやさしく対応していないように見える」「お迎えに行ったら、子どもが泣いていて先生が近くにいなかった」

そんな不安材料を目にすることが続いたり、保育者に確かめようとしても不誠実な態度だったりしたときは、園長や主任などの幹部に相談してみるのもよいでしょう。

園の中で至らない部分が気づかれないままになっていると、事故につながる恐れもあります。認可・認可外とも保育園・保育施設がふえている時期ですので、保育者の採用や異動もふえており、不慣れなまま保育を行っている場合もあります。

信頼を基本路線としつつも、「おや?」と思ったことは「こんなことが不安になったのですが……」と伝えてみることは、子どものためにも必要だと思います。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。