あなたが悪いのではない
この春、保育園に子どもを入園させた方、慣らし保育はもう終わりましたか?
喜び勇んで入園したものの、送っていくと子どもに泣かれ、後ろ髪をひかれる思いをしているママ・パパもいるかもしれません。
中には、子どもを預けることに罪悪感をもってしまう人もいます。
でも、あなたが悪いわけではありません。
ママがおうちにいる幼稚園児でも、幼稚園に入園して泣いてしまう子どもはいるのです。
子どもにとっては乗り越えなくてはならないちょっぴりつらい時間ですが、少しでも楽に乗り越えられるように親と保育者が一緒に頑張ることで、やがて子どもも保育園生活を楽しめるようになります。
1歳はややこしい
ある研究によれば、保育園に預けられてすぐに慣れてしまうのは、人見知り前の0歳児なんだそうです。まだ人見知りできる認識力が育っていないためです。次に幼児(3~5歳)が慣れやすく、次に2歳、1歳はいちばん慣れにくい年齢です。
この年齢の子どもは、相手を見分ける力が育ち、特定の大人(親など)にくっついていることで安心します。このような関係を愛着関係といいます。愛着の対象である大人は子どもにとっての安全基地のようなもので、少し離れた場所にいても、こわかったり痛かったりするとその大人のところに戻ってきて抱きついて安心しようとします。このような行動は、子どもが自分を守るために身につけている本能的なものとも考えられています。
「先生はやさしいよ」「夕方にはまた会えるんだよ」と言葉で言ってもまだ理解できない年齢ですが、やがて子どもは保育者も安全基地として感じることができるようになり、適応していきます。
心配であれば、保育者と連絡をとりあって、子どものようすを聞いてみてください。意外に、親と別れたあとは、保育者がおもちゃやお友だちに関心が移るように仕向けてくれて、泣きやんで遊んでいたということが多いものです。
「かわいそう」と思ってはいけない
保育園へのなじみ方は、子どもによってさまざまです。まったく泣かない子どももいますし、数日たってから泣いてしまう子どももいます。朝のお別れは何カ月も泣きとおしたという子どももいます。
それぞれ個性ですので、子どもの気持ちがすむまで待つしかありません。
このときに親として気をつけたいのは、親自身が預けることをかわいそうと思わないことです。親が不安や迷いを感じていると、子どももその気持ちを敏感に感じて不安になってしまうことがあります。
まずは、親が保育者を信頼し、それを態度に表したほうがいいでしょう。子どもの前で親と保育者がなごやかに話したりしていると、子どもも「この人は大丈夫なんだ」と感じてくれるかもしれません。
いったん保育者に子どもを渡したら、明るく「バイバイ」し、さっと立ち去りましょう。親が見えなくなれば、保育者は子どもの気持ちを切り替えるように働きかけることができます。
まだ言ってもわからない年齢でも、「ママは会社行くけど、夕方に帰ってくるからね。保育園でいっぱい遊んで待っててね」と子どもに話しかけていたというママもいましたが、そんな気持ちも大切だと思います。
保育園のようすが心配なとき
保育者と保護者との信頼関係は、子どもが保育園に慣れた後も大切です。一緒に子どもの成長を見守り、協力しあって子どもの生活をつないでいくパートナーとなるからです。疑問に思うことはなんでも聞いてみて、保育者や保育園の意図を理解しようとする気持ちをもつ必要があります。親に信頼されて保育者が安心して保育を行えることも、保育の質の一部といえます。
保育者を信じましょうといっても、どうしても不安を感じる場合はあるかもしれません。
「先生が頼りない」「子どもにやさしく対応していないように見える」「お迎えに行ったら、子どもが泣いていて先生が近くにいなかった」
そんな不安材料を目にすることが続いたり、保育者に確かめようとしても不誠実な態度だったりしたときは、園長や主任などの幹部に相談してみるのもよいでしょう。
園の中で至らない部分が気づかれないままになっていると、事故につながる恐れもあります。認可・認可外とも保育園・保育施設がふえている時期ですので、保育者の採用や異動もふえており、不慣れなまま保育を行っている場合もあります。
信頼を基本路線としつつも、「おや?」と思ったことは「こんなことが不安になったのですが……」と伝えてみることは、子どものためにも必要だと思います。
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。