――どうすればその溝が乗り越えられるんでしょう。
長い目で見ることができれば。子どもだってかわいいばっかりじゃなくて、母親が悩む時期が来るかもしれないし、仕事だってリストラにあうかもしれない。そのときに「前にあんなことをしちゃったから、恥ずかしくて前の友だちにいまさら連絡できない」なんて言わないで、素直に連絡する。もう1人のほうも受け止める。寛容であることが、友情には大切だと思います。
――香山先生ご自身は、女友だちとの関係で難しいと思ったことはありますか。
大学のとき、医学部だったので女性が少なくて、勉強は大変だし、女性同士力をあわせて、という感じで仲良くなりました。でもその中で、2人の友だちが1人の男性を取り合って……。私はその両方に、いい加減に相談に乗ったりして、いづらくなったことがあります。今は普通に、どちらとも連絡取り合っていますけど。時間がたつというのがありがたいことなんですね。卒業して20年以上して、お互い年をとると、人生いろいろというか。
心理学者の小倉千加子さんが前にエッセイにこんなことを書いておられました。同窓会に行くと、30代ぐらいまでは、結婚して子どもがいる女性が勝ちという感じで、子どもを連れてきたりする。でも、50代になったら逆転して、「独身なんでしょ、いいわね」「いい仕事してるんでしょ」、なんて言われて羨ましがられる、と。
20代の女性に、「人生長いんだから、50代になるまで待ってごらん」、と言っても、実感がないでしょうけどね(笑)。
※このインタビューは『女友だちの賞味期限』初版発行時の2006年に収録した内容の再掲です。
1960年北海道生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心に、政治・社会評論、サブカルチャー批評などさまざまなジャンルで発言を続けている。専門は精神病理学。『ぷちナショナリズム症候群』(中公新書ラクレ)、『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)、『なぜ日本人は劣化したか』(講談社現代新書)など、著書多数。近著は『できることを少しずつ』(毎日新聞社)、『若者のホンネ』(青春出版社)など。
聞き手=糸井 恵