鍛えるコツは“弱い負荷”

普通、筋トレで鍛えるのはアウターマッスルです。インナーマッスルを鍛えることはなかなかありません。

肩まわりのアウターマッスルは、三角筋、大胸筋、広背筋、僧帽筋そうぼうきんなどです。これらの筋肉は頑丈なので、通常の生活で切れたりすることはまずありません。本当に鍛えてほしいのはインナーマッスルのほうなのです。

インナーマッスルを鍛えるコツは、まず弱い負荷から始めること。アウターマッスルに余計な力が入らないようにしながら、インナーマッスルを意識して動かすことが大切です。

〈水中うちわあおぎ〉も〈椅子でうちわあおぎ〉も、肩が外側と内側にまわります。このような肩の回旋運動にはインナーマッスルが関わるため、この動きを繰り返すことで、自然にインナーマッスルに刺激を与えることができます。

とくに〈水中うちわあおぎ〉は、お湯につかりながらすることで、筋肉をリラックスさせる効果もあります。

インナーマッスルを鍛えるときは、アウターマッスルの三角筋などは働かせたくありません。〈水中うちわあおぎ〉は、全身が温まることによって、アウターマッスルがリラックスする理想的な体操といえます。

毎日の入浴やデスクワークの合間に簡単な体操を取り入れて、肩のインナーマッスルに刺激を与え、肩の機能をできるだけよい状態に保っていきましょう。

肩が楽になると、暮らしは変わる

けんばん断裂になってしまった方が目指すべきゴールは、腱板が修復されることだけではありません。夜に眠れ、一人で服が着られ、洗髪ができ、仕事が続けられ、趣味もできて、困らずに暮らせること。つまり、痛みが少なく、腕の機能が保たれたまま人生を全うすることです。

歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)
歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)

私は肩を専門とする整形外科医として、たくさんの患者さんの声を聞き、姿を見てきました。毎日シンプルな体操を続けることで、外に出るのがおっくうでなくなったという方もいます。好きだった趣味をまた楽しもうと前向きになった方もいます。

肩が楽になると、思っている以上に暮らしは変わります。家族や友人との時間にも、前より自然に笑顔でいられるようになるでしょう。

肩の痛みを和らげることは、単に症状を軽くすることではありません。諦めかけていた毎日を、もう一度取り戻していくことでもあるのです。

歌島 大輔(うたしま・だいすけ)
日本整形外科学会・日本専門医機構認定整形外科専門医/日本整形外科学会認定スポーツ医

1981年生まれ。山形大学医学部卒業。肩関節、肩関節鏡手術、スポーツ医学の専門家としてさまざまな肩治療を行う。肩関節鏡手術は年間約400件と全国トップクラス。診療のかたわら「医学的根拠のあるセルフケアを」との信念から、YouTubeで医療情報の発信も行っている。現在は東京脊椎・関節クリニック 羽田に所属。