60年後、男からの手紙には…
なお、70代後半になって、千代はこのときの男から手紙をもらっている。そこには、村長を継いだが、村道工事に立ち会った際、ダイナマイトで両手両足を失い、今は口で写経をする日々と書かれていた。「昔のことは忘れません」ともあったというが、千代ももちろん忘れることはなく、小説にまで書いている。17歳と思えないほどの冷徹な観察と賢しい振る舞いは、まさに将来の小説家の面目躍如である。
花も嵐も踏み越えて、千代の人生は続く。
・参考文献
宇野千代「模倣の天才」小池真理子選『精選女性随筆集 宇野千代 大庭みな子』文春文庫、2024年
宇野千代「文学的自叙伝」
宇野千代「私の青春物語」
宇野千代『生きて行く私』角川文庫、1996年
宇野千代「処女」『新選宇野千代集』改造社、1929年
宇野千代『或る一人の女の話』講談社文芸文庫、2006年
宇野千代『私の文学的回想記』中央公論社、1972年
宇野千代「あとがき」『宇野千代全集 第1巻』中央公論社、1977年
宇野千代 渡辺正彦編『宇野千代』日本図書センター、1995年
尾形明子『宇野千代』新典社、2014年
神埜努『宇野千代の札幌時代:女流作家の誕生』共同文化社、2000年
宇野千代、小林庸浩ほか『宇野千代 女の一生』新潮社、2013年
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