職場でも「誰と組むか」が重要
自分の持ち味を活かせる相手や場面にまだ出会えていない人は、強みがまだ「波」になりきれていない、と言いかえられます。
同じ「好奇心」という強みでも、それを一緒に楽しめる相手の前では、アクター効果とパートナー効果の両方が働き、関係そのものの質を引き上げます。反対に、好奇心をうっとうしがる相手の前では、せっかくの強みも活きません。才能は、誰と組むか、どんな関係の中で使うかで、その効き目が大きく変わるのです。
これは夫婦の話に限りません。職場の上司と部下、サークルの先輩と後輩、SNS上の発信者とフォロワー。この研究が調べたのは夫婦だけですが、同じ仕組みが他の関係でも働いていると考えてもそれほど無理はないでしょう。
自分の強みが空回りしているように感じるとき、それは強みそのものがダメなのではなく、強みが広がっていく相手や場面がまだ見つかっていないだけということがよくあります。
自分の持ち味を磨くことと、その持ち味を活かせる関係を選ぶことは、別々の作業ではなく、ひとつながりの作業なのです。
1万時間かければ本当に一流になれるのか
では、才能は生まれつき決まっているのでしょうか。それとも、努力であとから身につくものなのでしょうか。
とても古い問いですが、いまだに答えが出ずに論争が続いています。1万時間練習すれば誰でも一流になれるという人もいます。いやいや、生まれ持った素質ですべてが決まるのだという人もいます。この対立に一石を投じてくれた双子の研究を紹介します。
カロリンスカ研究所のモシングらは、スウェーデンの双子レジストリに登録された約1万500名の双子を調べました。1人ひとりについて、音楽の練習時間と音楽の力のつながりを分析したのです。
双子の研究は、生まれつきの影響と育った環境の影響を分けて見るのにぴったりの方法です。遺伝子をほぼ100%共有する一卵性双生児と、約半分を共有する二卵性双生児をくらべます。2組の似ぐあいの差を見ると、その性質がどれくらい遺伝で決まっているかを見積もれるのです。
モシングらは、「もし練習が音楽の力をぐんぐん伸ばすのなら、同じ家庭で育った一卵性双生児のうち、たくさん練習したほうが力も高くなるはずだが、本当にそうなっているのか」という問いを立てました。
この分析から、世間で広く信じられている「練習がすべて」というお話を大きく揺さぶる結果が出てきます。