「たんぱく質ファースト」の鉄則

あらためて、その中身を分解してみましょう。スープには肉や魚介、野菜から溶け出したミネラルや脂溶性成分が含まれ、体が必要とする微量栄養素を無理なく補ってくれます。麺の小麦は脳のガソリンとなる糖質を供給し、チャーシューや味玉は、筋肉や細胞膜、そして意欲を支えるホルモンの材料となるたんぱく質とコレステロールをバランスよく提供してくれます。これほど多様な栄養素を、一度に、かつ美味しくまとめて摂れる食事は、実はそう多くありません。

書影
和田秀樹『ラーメンと健康 「炭水化物=悪」ではない』(KADOKAWA)

それなのに、「ラーメンは体に悪い」と罪悪感を抱いてしまうのは、医学的に正しい情報というよりも、根拠のない制限思考が作り出した呪縛にすぎません。必要以上に脂質やカロリーを控え、結果として心身の調子を崩している人が少なくない現状を考えれば、イメージだけでラーメンを悪者にする風潮は、まさに本末転倒と言えるでしょう。

ただし、一つだけ注意していただきたいのが「食べるタイミングと作法」です。

たとえば、多忙な現役世代に多い「朝食を抜き、空腹時間が極端に長くなった状態で昼食を迎える」というパターン。この状態でいきなり麺(糖質)をかき込んでしまうと、血糖値が急上昇し、脂肪を溜め込みやすい代謝モードを招いてしまいます。

もし、十分な栄養を摂れなかったあとの食事としてラーメンを選ぶなら、「たんぱく質ファースト」がより大きな意味を持ちます。たんぱく質や脂質には血糖値の上昇を抑える働きがあるためです。

まずはスープをひと口味わい、次にチャーシューや味玉、トッピングの野菜から箸をつける。この簡単な順番を徹底するだけで、ラーメンは体と脳への的確なエネルギー補給となり、明日への活力をチャージする頼もしい健康の味方へと姿を変えるのです。

(参考文献)
・柴田博『中高年健康常識を疑う』(講談社)
・「国立がん研究センターがん対策研究所」肥満指数(BMI)と死亡リスクSasazuki S, et al. Journal of Epidemiology 2011;21(6):417- 430.
・Shibata H. et al. Nutr healt 1992;8:165-175.

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。