子どもが30歳になるまでに使い切れ!

最初に一括贈与したものを、教育資金を使うたびごとに領収書を提出して引き出していき、孫が30歳に到達したときに口座に残っている分には贈与税がかかることになる。贈与を受ける時点での教育費を使う孫の年齢や、どのような進路を選択するかで使いきれる教育費の額は変わってくる。残ってしまうと贈与税がかかるので、だいたい必要な金額を計算して贈与してもらうのが賢い使い方だろう。

1500万円の範囲内で追加で贈与したい場合は、2015年12月31日までならOK。教育費以外の引き出しは課税対象となる。1人の孫に対して1500万円までなら、複数人が贈与することも可能。

制度の適用期間は2015年12月31日までだが、金融機関で専用口座を作る手続きが必要になるので、ギリギリの申し込みは避けたいところ。相続税対策をしておいたほうがよさそうなら、早めに親に提案してみよう。普段はなかなか話を切り出しにくい相続問題だが、孫への教育資金贈与という前向きな制度を話し合うことがきっかけになって、相続対策を考えることができれば、とても有意義なことである。

制度に振り回されない教育費の使い方を

相続税負担を減らし、親世代の教育費負担を軽くする制度として活用するメリットはあるが、制度自体に振り回されて孫が必要のない教育を無理に受けさせられることにもなりかねない。いくら資金があるといっても、意味のない教育費をかける必要はないということは肝に銘じたい。孫が本当に学びたいことで、将来のためになるお金の使い方ができれば、非課税贈与のメリットも大きい。

また、お金を出すと口も出したくなるのが人の心情である。祖父母の世代、親世代と違う世の中を孫である子どもたちは生きている。自分たちの時代の常識で教育を押し付けるのも、ミスリードの場合が多くなる。年長者としてアドバイスすることは必要だが、この制度で贈与された教育費が、若者の将来を尊重した方向で使われることを願うばかりだ。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。