自分の順番をまわりに教えてもらう

奥の部屋から用が済んだ人が出てくると、待合室の中の一人がすっと立ち上がって部屋へ入っていく。誰に促されるわけでもないし、その人が進んだところで誰にとがめられているわけでもない。なぜかその人は、自分の順番をしっかり把握しているのである。

待っているのは、全体で10人ほど。私より先に来ていた人が、一人、二人と用が済んで帰っていき、それと同時にまた私の後にも次々と人がやってきて、右に左にと好きな場所に座る。待合室のメンバーは、入れ替わっていく。私は自分が何番目なのか、わからなくなってしまった。

しばらくすると、50代くらいの白髪交じりの男性と、40代くらいの眼鏡の女性が揃って、

「ほら、あなたの番よ」

と私に声をかけ、部屋に入るよう促してくれた。

「なんでわかるのだろう」と思いながらもお礼を述べ、慌てて扉を開けた。

どうしてみんな、順番が把握できているのだろう。フランスで子どもの頃からこの体験を当たり前にし続けていれば、これができる能力が身に付くのだろうか?

まったく見当もつかないまま、混乱しながら用事を済ませ、帰宅した。

並ばない待合室方式で、頭がパンク寸前に

実はこの、並ばない待合室方式は、役所だけでなく、あらゆる施設で採用されていた。この不便な方法は珍しいわけでなく、なんとフランスでのスタンダードだった。

私はこの「並ばない待合室方式」にぶち当たるたびに

「あー、まただ、どうしよう」

と苦痛に思った。だがこれがここのスタンダードなのだから、仕方がない。毎回皆さんに順番を教えていただくわけにもいかないので、なんとか順番を把握できるように頑張った。

トレオレル美智子『フランス人の気楽な働き方全力の休み方』(フォレスト出版)
トレオレル美智子『フランス人の気楽な働き方全力の休み方』(フォレスト出版)

私が試みたのは、この方法だ。

まずは、到着した時点で、誰が私より前に到着していたかを覚える努力をする。私は、服の色と番号をセットにして、記憶することにした。

1番はピンク、2番は青、そして3番は茶色とクリームで、4番は……、そう頭の中で唱えている途中で、1番のピンクが部屋に入ってしまった。

そうなると、頭の中の情報をすぐさま更新しなければいけない。青が1番になって、2番が茶色とクリームでと記憶し直す。

おっと、まだ色と番号の情報を頭の中で更新し終わっていないところで、新たに青い服の人が入ってきてしまった。しかもその新たな青い服の人は、1番の青と2番の茶色クリームの間に座ったではないか。これは、ややっこしい。青が被っている上に、私よりも順番が後である新入りが、かなり先の方の人たちの中に混ざって座っている。

このように私の頭の中は、いつもうまくいかないまま失敗に終わった。そうして私にとって、この並ばない待合室方式は、いつまで経ってもクリアできない課題となっていた。