「女性・女系天皇阻止」という執念の源
ただし、その前の部分では、「麻生家は今では菩提寺の川島正恩寺が消失し、過去帳なども灰に帰したためその記録も残っていないのが残念だが」とも記されている。
つまり、根拠となる史料がないのである。その点では、麻生太郎氏が藤原一族の流れをくむのは、今流行りの「フェイク」である可能性も高い。
しかし、重要なのは、麻生家でそのように伝えられてきたことである。麻生副総裁のなかに、「藤原一族」としての意識が植えつけられている可能性があるわけだ。しかも、これは調べてみると面白いのだが、麻生家が実際に藤原一族に連なる系譜も無きにしも非ずなのだ。
藤原一族は、娘を天皇に嫁がせ、その子どもを天皇に即位させることで権力を保持し、そのシステムに都合の悪い女性天皇を排除した。その結果、飛鳥・奈良時代には多く生まれた女性天皇が、平安時代以降には、江戸時代まで生まれなくなった。
麻生副総裁の考えは、藤原一族の思想と重なる。かつての藤原一族がそうであったように、彼にとって、女性天皇や女系天皇はあってはならない存在なのだ。
そこに、麻生太郎氏の情熱の源があったのだ。
しかし、はっきりと述べておこう。今は、藤原一族の世の中ではない。麻生副総裁の野望は国民から見透かされ、国民からの強い批判を生んだ。さらには「愛子天皇」待望論をかえって高める、という大誤算も生んだ。致命的な、読み違えである。
どうやら麻生太郎氏には、道長の巧みな政治操作の技術は、備わっていないようである。
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。