「郵政民営化」で追い詰められた郵便局

「自民党をぶっ潰す」と言い放ち、2001年に自由民主党総裁選で圧勝した小泉純一郎元首相が掲げた「聖域なき構造改革」の目玉は「郵政民営化」でした。

2004年の所信表明演説で「郵政公社には40万人の職員がいるが、郵政事業は公務員でなければできないのか?」と、あたかも民営化すれば40万人の公務員の給料を税金で賄わなくてもいいような幻想を振り撒き、民間になれば法人税を支払うのだから、国の財政健全化に寄与するとまで言い放ちました。

ただ、これは大嘘。

なぜなら、郵政公社で働く40万人は公務員ですが独立採算だったので、給料には1円の税金も使われていませんでした。当時、国会でこれについて問われた竹中平蔵郵政民営化担当相も、「直接投入されている税金はないと承知しています」と答弁しています。

それどころか郵政事業は官の事業にしては珍しく儲かっていて、逆にその儲けを「国庫納付金」として国に納めていました。民営化前の4年間(2003年〜2007年)に、郵政公社が国に納めた「国庫納付金」は、なんと約9600億円でした。

確かに、民間ではないので法人税は払っていませんでしたが、民間の法人税が当時は利益の約4割だったのに対し、公社が国に納める「国庫納付金」は利益の約5割。つまり、法人税よりも多くのお金を国に納めている、国の事業の稼ぎ頭でもあったのです。

ではなぜ国の優良事業だった郵便局を、大嘘までついて「民営化」したのでしょうか。

6200億円をドブに捨てた、雇われ社長

そこには、アメリカと銀行業界からの圧力があったと言われています。

アメリカは、郵便局が持つ貯金と保険360兆円を狙い、1994年から「対日年次改革要望書」で郵便局の民営化・市場開放を求め続けていました。また銀行業界は、親方日の丸の巨大金融機関「郵便局」を民営化で弱体化させ、自分たちのビジネスチャンスを広げたかった。

ネットワークでつながるビジネスのイメージ
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

実際に民営化後、アメリカの生命保険会社アフラックは全国2万4000店の郵便局ネットワークを利用してがん保険の販売をはじめ、銀行も郵便局で投資信託が販売できるようになり、両者には大きなメリットがありました。

さらに、選挙で勝つには、悪をぶった切る正義の味方を演じる小泉劇場で、足を引っ張る悪者が必要だった。それが「郵政民営化」に反対する「抵抗勢力」で、ここに「刺客」を立て、批判を集中させました。

結果、2005年の衆議院選挙は「郵政民営化に是か否か」のワンイシューで戦われ、自民党はそれまでの212議席を大きく上回る296議席を獲得。選挙から1カ月後に「郵政民営化法」が成立しました。