問題だらけの改正案

改正案によれば、敬宮殿下をはじめとする内親王や女王方は婚姻後も、皇族の身分を引き続き保持される。これまで未婚の女性皇族は、婚姻とともに一律に皇籍を離脱される制度だった。それと比べて、一見、歓迎すべき変更のようだ。

だが、そうではない。何と皇室の中で、婚姻後の内親王・女王方“だけ”が一般国民と同じように、住民登録を義務付けられる(改正案第4条)。

これは配偶者やお子さまが、男性皇族なら同じ皇族なのとは異なり、内親王・女王の場合だけ「国民」とされるからだ。近代以降、「家族は同じ身分」とされるのに対して、夫婦も親子も身分が違う前代未聞の“異例の家族”を強制されることを意味する。

その一方で、親の代からすでに一般人なのに、旧宮家系の民間男性は血筋・家柄=門地もんちだけを根拠として、ほかの国民には禁止されている皇族との養子縁組を例外的に認め、皇族との婚姻を介さないで特権的に皇族の身分を取得できるようにする(改正案第1条)。

このプランに対しては、かねて憲法(第14条)が禁止する「門地による差別」に該当する疑いが指摘されている。違憲訴訟を準備する動きも複数ある。

皇室の「聖域」性を崩す

皇室典範は昭和22年(1947年)に制定されて以来、実質的な本則の改正はこれまでなかった。昭和24年(1949年)に「宮内府」から「宮内庁」に変更された時に、それに対応する技術的な改正があっただけだ。ほかは、平成29年(2017年)の退位特例法の制定に際して、それを根拠づける規定が附則に加えられたにとどまる。

もし今回、皇室典範が改正されたら、制定後初の本格的な改正になる。しかしそれは、これまで皇室典範が大切にしてきた原則そのものを、根底から崩してしまいかねない中身になっている。

それは天皇・皇室が「国民統合の象徴」であられるために欠かせない、皇室の「聖域」性であり、政治的野望や経済的打算などが渦巻く俗世間と皇室との間の、厳格な“線引き”だ。

これは、まさに今の天皇ご一家によって体現されている皇室の高貴な精神が、代々受け継がれるための大切な防御壁になってきた。単なる血筋の継承だけでなく、「国民と苦楽を共にする」という精神のたしかな受け継ぎがあってこそ、国民の中から皇室への敬愛の気持ちも自然に生まれる。

その「聖域」性を、政府は意図的に壊そうとしているようにしか、見えない。しかも、当事者でいらっしゃる皇室の方々のご意向を汲むためには、法案化に際して宮内庁と密接に連携することが欠かせないはずなのに、ほとんど蚊帳の外におくという横暴さだ。