最も深刻なアンコンシャスバイアスとは
政府が必死に旗を振る「理系女子枠」施策だが、ほとんど触れていない事実が存在する。それは、大多数の一般女性は「学生の自由な選択や公平な試験の結果、工学部に女性が少ない」事実に不満を持ってはいないということだ。
それにもかかわらず、近年の男女共同参画やら女性活躍推進政策は「目指せ、女性役員30%」「目指せ、東大女性教授300人」といった数値目標に加え、「企業内の男性管理職への電気流して生理痛体験会」などユニークなイベントも実施している。これに対しては女性側からも「誰もそれを希望していない」「変な女性管理職よりはフツーの男性管理職でいい」といった声もあがっている。
何より、私が最も深刻だと思うのは「女性活躍という絶対正義のためには、男性が犠牲になるのは仕方がない」という男女共同参画の施策を練っている人たち自身のアンコンシャスバイアスである。
近年では女子枠学生のみならず、「ロールモデル」として理系教官女性率も文科省に評価されるため(補助金額に影響する)、「女性限定」教官公募も珍しくなくなった。これには「男性差別・憲法違反ではないか」といった指摘もある。そうした女性優遇の流れで「国内就職できずに、中国にわたって就職する男性科学者」の存在がしばしば報じられると同時に「業績・実績不足の女性理系教官」も散見されるようになった。
例えば、京都大学の女性教授が2021年に発表した「JIP論文」は、データ改ざんが強く疑われて「令和のSTAP騒動」と話題になった。京都大学は今年、報告書で研究不正を認めたが、「家庭の事情(育児介護等)により業務過多」という釈明を載せた。だが、そうしたプライベートな事情ゆえに、不正が認められてはならないことは言うまでもない。この女性教授は現在も数億円の研究費が支給されたまま処分を受けず、研究不正を通報した博士研究員は女性教授に雇止めされた、と報道されている。
2026年6月、米国カリフォルニア州立大学の理工系教官が共同で「内申書と自己アピール文が主体の入試となり、数学レベルが低い生徒が急増している」「UCサンディエゴ校では約12人に1人が中学生以下(レベル)」「自己アピール文はAIで盛れる」「理系学部は入試に共通テスト(SAT/ACT)数学を再び必須化してほしい」と訴えた。
「女性優遇・男性差別制度」から脱却すべき
日本も「多様性」「男女共同参画」と称する、「女性優遇・男性差別制度」から早々に脱却すべきではないか。
もちろん理数系を志望する女子生徒を邪魔するような仕組みは改善しなくてはいけないが、入試方法としては、多くの人が納得できる性別不問の「筆記テストによる入試選抜」こそが研究不正も予防し、日本経済に最も貢献できる形だろう。
私が医大受験生だった昭和末期には、国公立を含めて小論文や面接での「女性減点」は常識とされていた。就職にあたっても「○○病院は女性は1人しか採用しない」のような情報が流れていたし、「就職後2年間は妊娠禁止」を公言する医大教授も実在した。
だからこそ、性別のように「自分では変えられない属性で入試や就職で減点される不条理」は理解しているつもりだ。科学を志す若い男性に「かつて自分が味わった不条理」を残すべきではないと確信している。
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)