「立ち止まれる」のが本の醍醐味

以前、とあるオーディションで講師を選ぶ審査員をしたときの話です。他の参加者が流暢にプレゼンする中、ある登壇者の男性が亡くなった奥様のエピソードに差し掛かった瞬間、言葉を詰まらせ、……数秒間、沈黙しました。

書影
石川和男『誰でもできて100%仕事の成果が出る 速効読書』(青春出版社)

通常なら減点です。しかし、その「止まった時間」に観客は自然と考え始めたのです。「自分は、妻を本当に大切にできているだろうか」「子どもと向き合っているだろうか」「大事な人にきちんと感謝を伝えているか」「家族との時間を後回しにしていないか」「自分が突然いなくなったら、何を後悔するだろうか」と。

彼がもし流暢に話し続けていたら、そんな思考は生まれなかったでしょう。動画のように流暢ではない本なら、立ち止まり、考え、線を引き、行動につなげる言葉をノートに書き移すことができます。自分のペースで戻り、考えを深める余白があります。

動画はどうしても話が流れていき、同じように立ち止まって考えることは簡単ではありません。だからこそ、動画は入口として使い、じっくり考えるための内容は本を手に取る。この使い分けが必要です。

石川 和男 (いしかわ・かずお)
時間管理コンサルタント

出版コンサル会社インプルーブ代表取締役、明治大学客員研究員、税理士、建設会社役員、人材育成会社副社長、時間管理の専門家、ビジネス書著者(累計33冊)など。かつては深夜11時退社が当たり前のビジネスパーソン。転機は1日15分の読書習慣。ビジネス書を読み、学んだことをノートに書き、実践し、習慣化。その積み重ねにより、生産性を落とさず残業を減らす独自の時間管理術を確立。現在は出版コンサルタントをはじめ、9つの仕事を並行しながら、プライベートの時間も大切にする働き方を実践している。著書に『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)ほか多数。勉強法・時間術・リーダーシップ・働き方改革など幅広いテーマで執筆。