「NISA貧乏」の弊害
一方、強い老後不安から「NISA貧乏」に陥っている若い方にもよく出会います。先日、大手メーカーにお勤めの30代女性が、「水道が壊れちゃったけど直すお金が……」と嘆いていたのですが、その方はすでに1000万円以上もNISAで資産形成できているのです。「そんなに大金なの?」と聞けば、「3万円」とのこと。小さくない額とはいえ、水道の修理を渋ってしまうほど、お金のほとんどをNISAに注ぎ込んでしまっていることが衝撃的でした。
積み立ててきた資産を取り崩すことには誰もが抵抗を覚えると思いますが、毎月一定額が入ってくるお給料のようなお金だと、まだ使いやすいですよね。そのため彼女には、「給与みたいな感覚で配当金を好きなものに使ってみてください」とアドバイスをしました。
なぜ私がこんなアドバイスをしたかというと、老後不安が強すぎて節約や貯金ばかりしていると、本当に「お金が使えなくなってしまう」危惧があるからです。
老後不安から引き起こされる「NISA貧乏」ですが、ではいざ本当に老後になって収入が途絶えた時、一体どうなってしまうのでしょう。ますます不安に陥って、結局生涯を通して、お金を使いたい時に使えなくなってしまうのではないでしょうか。
身近な70代、80代を見てほしい
「不安」は知識不足からくることも多いです。「老後のお金が心配だから、今使うのが不安」な方におすすめなのは、身近にいる70代、80代の方の生活を見てみることです。若いうちは気力も体力もあるので活動範囲は広いですし、さまざまな欲もあると思いますが、歳をとると自然と足が遠のく場所が増えたり、グレイヘアに移行したことで美容院代がかからなくなったりと、意外な変化があるはず。
その上で、「70代後半だと、いくらあれば生活が楽しめそうかな?」と、年代別に必要なお金を算出してみると、少しずつ不安もほどけてくるように思います。
お金は使うことで経験値が上がるもの。「買わなきゃよかった」も「ちょっと奮発しすぎちゃった」も、何も使わなければ「経験」すらなくなってしまいます。自分は何にお金を使うと幸せかは、経験しないことにはわかりませんよね。また、社会情勢によっては経験すら難しいことも出てくるかもしれません。老後不安の原因を解明しながら、今を楽しむことも忘れずにいたいですね。
構成=小泉なつみ
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年前後のお金の強化書』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。