現政権の本音が見えた「昭和100年記念式典」

それは、自分たちが政治を行う上で、あるいは自分たちの主張を展開する上で、天皇や皇族が発言したり、何らかの行動を起こすことが邪魔になるからである。

最近も、それがはっきりとした出来事があった。

それは、4月29日に行われた「昭和100年記念式典」においてである。その場には、天皇皇后が臨席していたにもかかわらず、天皇の「お言葉」はなかった。それは違和感を抱かせるものだったが、すぐにそれが官邸の意向であることが判明した。

天皇がそこで挨拶をすれば、昭和の時代に起こった戦争に言及し、平和の貴さを強調したことであろう。高市早苗首相としては、それを怖れたのだ。自分が推し進めようとしている政治に対して、天皇が圧力をかけるような結果になるからである。

高市首相も、小堀名誉教授のように、天皇には居てさえすればいいと考え、宮中での祈り以外不要だと考えているのではないだろうか。

それが、保守派全体の考えであり、だからこそ、天皇の象徴としての在り方や行動の仕方については議論されず、ひたすら血による継承だけが問題にされるのである。

養子案は、女性天皇や女系天皇を阻止するために持ち出されたものである。

もしも国民が待望する「愛子天皇」が実現し、「お言葉」が発せられれば、それは政治家や保守派の論客に大きな圧力になる。麻生副総裁などは、それを本心から怖れているのではないだろうか。

御料牧場に到着された天皇皇后両陛下並びに愛子内親王殿下(2026年5月1日/出典=宮内庁Instagram[@kunaicho_jp])
島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家

放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。