年金額が2倍になったケースも
年金分割には「3号分割」と「合意分割」の2種類がありますが、主に専業主婦が対象となる3号分割なら夫の同意は不要です。離婚後に一人で年金事務所に行って手続きできるので、3号分割が可能な人は忘れずに手続きしておきましょう。
合意分割では夫の同意が必要です。ただし、同意が得られなくても、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる方法が用意されています。そして、裁判所を通せば、ほとんどの場合2分の1の割合での年金分割が実現します。夫を説得できなくてもあきらめる必要はありません。
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金分割により増える年金額は平均で月3万3000円です。年間では約40万円、20年間受け取るとすれば約800万円の差になります。私がこれまでにご相談を受けたケースでは、月額4万8000円だった年金が月額9万5000円と約2倍に増えた方がいらっしゃいました。年金分割の効果は決して小さくありません。
年金事務所で「年金分割のための情報提供請求」をすれば、50歳以上の人は年金分割前後の年金額の違いを具体的に確認できます。この手続きは離婚が決まっていなくてもできるため、まずは年金額を確認してみることから始めるのがおすすめです。
「将来の退職金」は今すぐ請求できる
② 夫の退職金
退職金は長年の勤務に対して支払われるものであり、給与の後払い的な性質を持つと考えられています。そのため、婚姻期間中の勤務に対応する部分は財産分与の対象になります。
たとえば、夫の勤務期間が40年、そのうち30年が婚姻期間であれば、退職金の40分の30が夫婦の財産です。妻はその半分の40分の15を夫に請求する権利があります。
重要なのは、将来受け取る退職金も財産分与の対象になるという点です。退職がまだ先であっても、退職金は日々積み上がっていることになります。退職時期がそう遠くない熟年離婚の場合には、将来の退職金の財産分与も請求できることを知っておきましょう。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、民間企業に大卒で35年以上勤務した場合の退職金の平均額は2037万円です。婚姻期間が長くずっと専業主婦だった人などは、夫から1000万円前後を受け取れる可能性があります。実際、熟年離婚で退職金をもらっている人の場合、1000万円前後になることも珍しくありません。
企業年金についても、婚姻期間中に積み立てられた部分は財産分与の対象となる可能性があります。企業年金は年金分割制度の対象ではないため、財産分与として請求できるなら忘れずにもらいたいものです。
退職金や企業年金の具体的な金額は、本人でなければ把握しにくいことがあります。将来的に離婚を考えている場合、できれば離婚を切り出す前の段階で金額を確認しておくことが望ましいでしょう。