「よく名前が挙がる人」を忘れないで

もちろん、京都に限らず影響者が「腹落ち」できない状況では、どれほど合理的あるいは有益な方向に進めようとしても、場の空気そのものがこれを不可とします。

以上を踏まえて、端的に根回しがうまくいかない例を挙げるなら、主に次の2つです。

・決定権者だけを押さえて満足し、参画者や関与者を軽視する
・参画者だけ整えて、決定権者と影響者の腹落ちを見誤る

いずれも、「場の構造」を見ずに一対一の延長だけで話を進めてしまった結果です。

実際の現場で「場の構造」を把握するためには、目に見える役職や発言内容などで判断するよりも「誰が発言した瞬間に空気が変わったか」「決定権者や参画者に強い作用を与える人物は誰か」「よく名前が挙がる人物は誰か」などを洞察すると浮かび上がります。

この構造が掴めるようになると、根回しの成否は劇的に安定し、「場の調和」へと広がります。

【図表1】「場」の関係構造の全体像
決定権者だけでなく、場の構造を踏まえて根回しをする必要がある。(出所=『京都人が教えるずるいけどうまい合意の技術』(青春出版社))
服部 真和(はっとり・まさかず)
行政書士、服部行政法務事務所代表

1979年、京都市生まれ。中央大学法学部卒業。京都府行政書士会 相談役。起業難関のまち京都で1500件を超える新規事業創出を支援し、行政手続・法律と現場をつなぐ「橋渡し」の専門家。とりわけ、景観、まちづくり、民泊、看板規制など、住民・事業者・行政が対立しやすい「摩擦の多いテーマ」において、三者の意見をまとめあげる調整役として数々のプロジェクトを成功させてきた。「衝突の現場を整理し、納得をつくる技術」に定評があり、関わった民泊案件300件のうち合意形成率は100%。著書『教養としての「行政法」入門』(日本実業出版社)など。