ナイチンゲールの著書を翻訳
桜井看護学校時代に学生たちが一緒にナイチンゲールの著書『看護覚え書』を翻訳したというシーンを描きましたが、これは史料には残っていないことです。ナイチンゲールの言葉が素晴らしいから紹介したくて入れてしまいました。
本では、修了式の写真を撮るシーンも描いています。あの写真には、これから未来へ向かってはばたこうとする彼女たち一人ひとりの思いが込められていると感じるので、ぜひ触れたかったのです。
ドラマのように断髪した?
本では雅の断髪についても触れています。幕末から明治にかけての時代には、世間は女性の断髪を良しとせず、東京府は「女子断髪禁止令」を出しています。男性のザンギリ頭が文明開化の象徴として歓迎された一方で、女性の断髪は「女性らしさ」を損なうものとして嫌われたんですね。だからこそ、その当時、女性が断髪するということに私は大きな意味を感じました。
実は勉学の意志を示すために断髪したという記録が残っているのは、同期の広瀬梅です。梅は岡山の出身なのですが、勉学のために上京することを父親に反対され、断髪することで本気であることを示しました。また、桜井看護学校の校長の矢嶋楫子も、女性から離婚することが難しかった時代に髪を切ることで、覚悟を示しました。そのくらい、女性が髪を切ることには大きな意味があったのです。
英国人教師も認めた雅の英語力
ところで、和と雅の共通点の一つに「英語」があります。和の英語力がどの程度だったのかはわかりませんが、雅の英語力が高かったことは間違いないようです。お孫さんの手記に、「フェリスで学んだ英語力を役立てた」と書いてあります。英国人教師アグネス・ヴェッチによる授業の通訳も、日常生活での通訳も、雅がやっていたという記録があります。アグネスは雅の卒業証書にだけ「看護学を教えるにふさわしい後継者です」という言葉を署名入りで書き添えています。