「生きることは食べること」最後までカッコよく
80歳を過ぎて、村上さんに負担を掛けないよう息子さんやお嫁さんが車で送迎してくれようとするが、村上さんはそれを「送迎してもらうと歩けなくなるわ……」と断る。それというのも、近年、顕著になった酷暑のさなか、タクシーを頻繁に利用した途端に足腰が弱り、自身の足で歩くことの大切さを感じ入ったからだ。人生100年と言われる時代、100歳まで自分の足で歩くためには、体を甘やかさないこと、そして食べ物に気を配ることがとても大切、と痛感した。それは、最後の最後まで自分らしさを貫くために、そして働き続けたいからこそなのだ。
「生きることは食べること」。人が生きるために必要な“食”に携わることが、村上さん自身の“生きる”に向き合う機会になっている。
「私はカッコいいことが大好きです。最後の最後まで気取っていたいと思います」
村上さんは、自分のことを“生来の気取り屋さん”という。「気取る」とは、「カッコよく見せる」こと。年齢を重ねると、「誰が見ているわけでもないし、この年だからカッコつけてもね」といった言葉を耳にすることが多くなる。確かに、カッコつけて生きることは大変なエネルギーを使うものだが、村上さんにとってそれは苦ではない。身だしなみはもちろん、住まいの整え方や仕事との向き合い方に至るまで、細かに気を配り、手を掛ける。体を動かすことをいとわない。それが村上さんの生き様なのだ。
「人間の体は24時間操業の工場と同じ。エネルギーが不足すると、筋力は衰え、腰は曲がり、カッコ悪いシニアになってしまいます。だから、私は最後までカッコよく生きるために、三食しっかり食べるのです。『元気の秘訣は?』とよく聞かれますが、それは、栄養・運動・社会参加。『お元気だから仕事ができるのですね』とおっしゃる方がいますが、私は仕事をしているから元気なのだと思っています」
世の中には、「あと何年働けば……」と考える人は多いだろう。しかし、村上さんを見ていると、年を重ねても自分の足で歩き、自由に生きていくためには“しっかり食べること”そして、“働き続けることが幸せにつながる”のだと気づかされる。
インタビュー取材・構成=江藤誌惠 撮影協力=品川プリンスホテル「コーヒーラウンジ マウナケア」
1942年福岡県生まれ。結婚後、27歳で料理教室をはじめ、料理コンテストの優勝をきっかけに料理研究家の道へ。1985年より福岡女子大学で栄養指導講座を担当。治療食の開発で油控えめでも一人分でも短時間調理ができる電子レンジに着目。研究を重ね、電子レンジ調理の第一人者となる。生活習慣病予防改善、個食時代の一人分簡単レシピ、小、中学校や保育園・幼稚園での食育出張授業、シニアの料理教室などあらゆるジャンルで電子レンジテクを活用。近著に『シニアひとり分のラクチンお鍋』(宝島社)、『古くて新しい 今こそ大豆』(東京書籍)、『料理家 村上祥子式 食べて生きのびる食べ力®』(集英社)など。著書は594冊以上、累計1296万部に上る。
