妻セツや子どもたちとの散歩

西大久保に転居してからも、ハーンの散歩好きはあいかわらず。50歳を過ぎても健脚は衰えず、あちこちの神社や寺を巡り歩く。成長した(編集部註:長男の)一雄や(次男の)巌を連れて出かけることも増えている。セツも時々、人力車の助けを借りて散歩に同行する。家族団欒だんらんのひと時を楽しんでいた。

この頃のハーンが好んでよく行ったのが、雑司ヶ谷の鬼子母神きしもじんと野方村の新井薬師だった。屋敷のすぐ近く、村を東西に貫く真っ直ぐな道が伸びている。鬼子母神へ行く時はこの道を渡って北上し、陸軍演習場がある戸山ヶ原の丘陵地を横断する。軍隊が射撃訓練をする時には道沿いに赤旗を掲げて通行禁止となるが、それ以外の日は通り抜けが許される。まだのどかな時代だった。