乗り物酔いしやすい人の特徴
「ところが宇宙に行くと、重力がありませんから筋肉からの情報がありません。重力にともなう加速度もなくなります。でも目からは情報が入りますね。だから脳が混乱して、宇宙酔いを起こしてしまうのです」
地球上にあるものは、地球がその中心に向かってあらゆる物体を引き寄せる力「引力」に引っ張られます。また、地球の自転によって生まれる力もかかっています。引力と自転によって起こる力をあわせて「重力」といいますが、宇宙ではその力が働かないのです。
次に、生理学が得意な石井先生に、みなさんも体験する「乗り物酔い」について教えてもらいましょう。
石井先生は「乗り物酔いにおちいるステップは3段階」と説明します。
「宇佐美先生が言うように、耳からの情報と目で見た情報を脳内であわせることによって、自分の体の動きや位置がわかるようになっています。そして第1段階が目の動きと、耳からの情報でふだんとちがうズレが生じ、異常を感じた時です。これが酔いの出発点。乗り物酔いをしない人は、第1段階でズレを異常と感じないため、第2段階には進みません。乗り物酔いしやすい人は、『ゆれる乗り物のなかでゲームや読書をしない』『遠くの景色を見なさい』とよく言われるでしょう。それは耳からの情報と目で見た情報のズレを少なくするためです」
第2段階は、その異常を脳の「海馬」という場所で、過去の記憶と照らし合わせ、「快か不快か」を判断します。ジェットコースターを楽しめる人は、第1段階で異常を感じても、「これは不快ではない」と脳が判断するため、乗り物酔いの症状が起きないのです。
「しかし第2段階で脳が不快と判断すると、自律神経が反射的に異常反応(乗り物酔いの症状)を起こしてしまいます。これが第3段階です」
乗り物酔いをしやすい人は自律神経が過剰に反応しやすいことと、その乗り物に対する学習経験の不足があるそうです。
石井先生は、留学を終えて日本にもどってからの研究で、乗り物に乗り慣れると、「日常の情報」として脳の海馬に記憶され、酔わなくなることを突き止めています。同じように宇宙飛行士も、初めての宇宙では3分の2以上の人が酔ってしまいますが、2回目の宇宙へのフライトではほとんど酔わないそうです。
つまり宇宙酔いも、乗り物酔いも、多くの原因は体験学習の少なさ。体験の積み重ねで必ず酔いは克服できるのです。