心の状態が耳に影響を与えること
伊藤さんはJCHO東京新宿メディカルセンターに20年以上勤務し、看護師さんとして大ベテラン。けれども耳鼻咽喉科への配属は2023年からで、まだ2年。「心の状態が耳に影響する」ことなど、初めて知ることも多いようです。
「あぁ伊藤さん、出勤したんだ。でも声がまだまだだねぇ」
石井先生が苦笑いしながらそう言います。じつは伊藤さん、風邪を引いて仕事を休んでいたのです。
「そうですね。でも石井先生に1週間前、すぐ診てもらえて本当に助かりました。あのあと先生が言った通り、せきがひどくなって……。処方してもらった薬を飲みました」
「そうでしょう。でも、しばらく大事にするんだよ」
石井先生はちょっとした“不調”に気づく名人。それはかつて自分も体の、そして心の不調に苦しんだからです。
(できる限り体に負担なく、早く正確に診断、患者さんの不調を治してあげたい)
このような石井先生の思いは、「優しさ」とともに「探究心」から生まれるようです。未知のものを知りたいという思い、探っていく、前に進んでいく姿勢。それは「耳鼻咽喉科の医師」としてだけでなく、「宇宙飛行士を支える医師」としても力を発揮しました。
「宇宙酔い」の研究に取り組む
じつは耳鼻咽喉科と宇宙飛行士には深いつながりがあるのです。石井先生は日本に宇宙飛行士が誕生した時から、彼らに役立つ研究を進めてきました。
そのひとつが「宇宙酔い」です。宇宙飛行士の7割が、宇宙に行くと酔って吐いてしまいます。
みなさんの中でも、電車やバス、車などに乗ると、酔って吐いてしまう人がいるでしょう。それと同じ症状が宇宙でも起きるのです。
石井先生は宇宙酔いを克服する研究を続けるうち、それが地上で不調を感じる人にも役立つことを突き止めました。
本書では石井先生が「医師」になるずっと前、小学生のころのこともお話ししてもらいます。いろんなものを分解したり、イタズラをしたりして、両親や、学校、習いごとの先生におこられてばかりいる、やんちゃな小学生だったようですよ。
でも好奇心は人一倍あったのです。
1978年生まれ。本名・梨本恵里子「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)、『老けない最強食』(文春新書)など。新著に『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)がある。
