愛子さまが中心となるこれからの天皇家

その秘策が、愛子内親王を真ん中に据えることだったのである。

そうした席の並び方は、事前に今上天皇から愛子内親王に伝えられていたはずだ。急に、今上天皇が愛子内親王に席を譲ったとしたら、愛子内親王は驚いて、強くためらうであろう。

東京ドームで、天皇一家が着席した場面を見ると、雅子皇后、愛子内親王、今上天皇の順に貴賓席に入ってきて、そのまま着席した。座る順は、その前に決まっていたことは間違いない。急な決定ではないのだ。

そのことを事前に聞いた愛子内親王が、それで髪を切ったということであれば、そこに決意が示されていると考えるべきであろう。

これからの天皇家は愛子内親王が中心であるということを、天皇一家は決め、愛子内親王もそれを受け入れたのだ。

それは、今上天皇が愛子内親王に対して席を譲ったことを意味する。天皇が席を譲るとしたら、それは「譲位」したことになる。私たちは、東京ドームの貴賓席において、譲位が実現され、「愛子天皇」が誕生した場面を目撃したことになるかもしれないのである。

愛子さまに託した今上天皇の思い

今上天皇はとても元気で、健康面で問題を抱えているとはまったく伝えられていない。ただ、即位したのは59歳の時のことで、歴史上2番目となる高齢での即位であった。最高齢は奈良時代末期の光仁こうにん天皇で、そちらは61歳での即位だった。

現在の今上天皇は、2月23日に66歳になった。長寿社会が実現した現在の日本では、まだ若い部類に属するかもしれないが、すでに高齢者の仲間入りを果たしていることも事実である。サラリーマンなら定年を迎えている。

古代の社会では、王の身体の衰えは、国家の衰退であるという考え方があり、老いた王を殺す「王殺し」の風習があったとも言われる。

それは歴史上の事実ではなく、伝説である可能性もあるが、今上天皇としても自分の年齢は気になるところで、できるならば、若い世代が日本を引っ張っていくべきだという思いもあるだろう。

今の上皇が即位したのは55歳のときで、昭和天皇になると25歳で即位している。もっと自分も早く天皇に即位していれば、「令和流」と呼べる新しい天皇のあり方を模索できたであろう。今上天皇にはその思いもあるはずだ。

その思いを愛子内親王に託した。東京ドームで起こったことは、そういうことかもしれない。私たち国民は、これから天皇一家がどういった並び方、座り方をするのか、それに是非とも注目し、その意味を考えなければならないのである。

天皇皇后両陛下と愛子内親王殿下(2026年3月8日/出典=宮内庁Instagram[@kunaicho_jp])
島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家

放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。