※本稿は、舟木彩乃『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
優秀な後輩女性に嫉妬する先輩
森川さん(仮名、女性20代)は、大学院在学中に政策担当秘書(以下、政策秘書)の資格試験に一発合格した才女です。翌春、大学院を修了してから、ある選挙区選出の衆議院議員(男性60代)の政策秘書として働きはじめました。彼女は、法律や公共政策などの専門分野については高度な学識を持っていて、政策の仕事(本会議や委員会での質問原稿作成など)を確実に処理できる優秀な政策秘書です。
政策の他にも、選挙区から国会見学に来る後援会や陳情に来る地方議員への対応も任されていましたが、もともと人当たりがよく謙虚な性格でもある森川さんは、地元の人からも好かれ人気がありました。
しかし、そんな彼女をこころよく思っていなかったのが秘書歴20年以上になる第一秘書のGさん(男性50代)です。
Gさんは、秘書経験もなく年齢も20代の女性が、形式的にでも一番上の政策秘書に就き、自分や古参の秘書たちよりも高い給与体系であることに我慢がならない様子でした。ベテランの自分が下なのは不公平だと思っていたのか、事務所のトップで秘書の任免権のある議員にも、なんとかしてほしいと直訴していたようです。
しかし、議員のほうは、彼女のおかげで委員会でも行政の不備を突くような鋭い質問ができるようになり、同じ委員会のメンバーにも褒められ、党内での評価も上がってきたところでした。それで、「まぁ、まぁ、気持ちはわかるがしばらくはこのままで頼む」と言って、受け流していました。
上司を思っての行動が思わぬ結果に
しかし、あるとき、翌日の委員会質問の打ち合わせをしていると、議員の言うことが見当外れで、ズレていることが自分でもわかっていないようでした。間違った理解のまま質問すると、せっかくの評価も下がることになりかねず、そのまま議事録に残ります。
森川さんは、議員のプライドに配慮しながら丁寧に指摘しましたが、言われた議員は「指摘された=バカにされた」と捉え、怒って打ち合わせをやめてしまいました。困った森川さんが、近くにいたGさんに相談しようとすると、嬉しそうに「(議員に)嫌われちゃったね」と返してきたということです。
また、選挙区で行われた集会での一幕ですが、後援会長が冒頭の挨拶で、議員は最近、党内で政策通として頭角を現していると称賛したことがありました。本人もまんざらではない様子でしたが、後援会長は少々口が滑り、「優秀な政策秘書がいて、先生(議員)も安心でしょう。森川さんあっての先生だ!」と、森川さんが政策を作っていることをバラしてしまいます。