残念に思うのは、そうした超過大評価の人々がしばしば努力を怠ってしまうようになること。他人よりも優れているといった勝手な思い込みがあり、慢心がある。だから仕事でも何でも成長が止まってしまい、自己と周囲との評価にさらなるギャップが生じます。そして、それを補おうと再び平均以上効果を駆使しては自己礼賛に走る。負のスパイラルです。

会社にもこうした手合いが少なからずいます。部署でいえば、個人の業績が明確な営業部なら客観評価が何よりものを言いますが、評価基準があやふやな総務など事務系では超過大評価の人が多いかもしれません。

最近勢力を増している彼らの共通点のひとつが、コミュニケーションの総量が不足しているということ。1人っ子や、パソコン・ゲームなどにどっぷり浸かる人が増え、人と接して話す時間が激減しているのです。他人こそ自分の鏡。「自分は人からこう思われているのか」という気づきを得たり、自己評価をより客観評価に近づけたりするためには、生身の人とのやりとりが不可欠です。ある意味、デジタル偏重で1人殻に閉じこもる傾向が、超過大評価人間を量産しているのかもしれません。

一方、こうした超過大評価の人とは対照的に、努力を惜しまない人とはどんな人か。思うに、いわゆる「成功者」の人はこういうタイプと言えるでしょう。彼らは総じて過度な平均以上効果を持つことなく、逆に平均以下効果であることさえもある。常に謙虚で、腰が低い。自分に欠けた部分を冷静に見極め、研鑽を積みます。

エステサロンの常連客に案外、スリムな女性が多いのは、彼女たちが自分の現状を直視したうえで、修正点を洗い出し、さらに磨きをかけようとしているから。こうした飽くなき成長欲求を持つ人はフィットネスジムにも見られます。今回のテーマに即して言うなら、頭のいい人は自己評価が低いということになるでしょう。

とはいえ、例外もあります。ソフトバンク社長の孫正義さんは、20代前半、起業したばかりなのに数名の社員の前で、「将来は会社の規模を売り上げ100億円、500億円にする」と大風呂敷を広げたと言います。きっと、かなり自惚れが強く、過度な平均以上効果の持ち主だと思われます。しかし、彼は口だけではなく、猛勉強したことはつとに有名。努力をともなっていたからこそ、自己評価が異常なほどに高くても、逆にそれをバネに成功したのです。

心理学者・立正大学特任講師 内藤誼人
ビジネスシーンでの心理学の実践的な活用法に定評あり。『権力のつかみ方-人の心を虜にするJFK式「心理操作の魔術」』『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』など著書多数。
(構成=大塚常好)
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