多くのラーメン店では客単価を上げるため「追加トッピング」を用意している。ただ、この中には利益率が低く、赤字覚悟の具材もある。公認会計士で元ラーメン店主の石動龍さんは「ラーメンそのものを値上げするのは難しいので、さまざまなトッピングを用意していた。ただ、利益率の低いトッピングばかり頼まれると、店としては困ってしまう」という――。

「ラーメン店の倒産が過去最多」は当然

1月に「ラーメン店の倒産が過去最多」というニュースが世間を騒がせました。

東京商工リサーチの記事によると、2023年のラーメン店の倒産(負債1000万円以上)は45件(前年比114.2%増)で、前年の2.1倍と大幅に増えたそうです。

びっくりした人もいるかと思いますが、元ラーメン店主の立場からすると、「当然そうなるだろう」という感想です。食材を中心に原価が大幅に上がっているのに対し、賃金上昇は緩やかで消費者の財布に余裕が出た感覚は乏しいため、値上げを行うのが難しい状況が続いていたからです。

食材や光熱費の値上げが相次いだ

私は2020年10月から2022年10月まで、地元の青森県八戸市で、公認会計士をしながら「ドラゴンラーメン」を経営し、時には厨房で調理にあたっていました。仕入れもすべて担当しており、食材の価格変化にも一喜一憂していました。

コロナ禍が落ち着き、外食需要が回復すると見込んで開店時期を決めたものの、振り返ってみると、コロナの影響は予想より長引いただけでなく、ウクライナ戦争など、予想できない環境変化もあり、開店の時期としては最悪に近いタイミングだったかもしれません。

2021年10月に、アメリカの小麦不作などが影響し、麺の仕入価格が大幅に上がりました。

干からびた小麦畑
写真=iStock.com/pixelfusion3d
アメリカの小麦不作などが影響し、麺の仕入価格が大幅に上がった(※写真はイメージです)

さらに燃料価格の高騰により、電気代、ガス代も値上げされます。

採算を合わせるために苦労しているうち、2022年2月にはウクライナ戦争が勃発。世界有数の穀倉地帯が戦地になり、さらなる食材価格や燃料価格の高騰は明らかでした。

わずか2年の経営期間でしたが、食材や水道光熱費の値上げが相次ぎ、利幅が恐ろしいスピードで減っていきました。