「これはいい制度で、もっと充実させる必要がある」

この回答に私は興味を引かれた。フレックスタイムとはどういうものかよく知らなかったからだ。彼女と並んで歩き、どういう具合に利用されているのか、彼女から話を聞き、スタッフから聞くよりよほど多くのことを学んだ。これはいい制度で、もっと充実させる必要がある――そうわかったのだ。ちなみに、それほど話しても、彼女は私が誰かわかっていないようだった。

コリン・パウエル/トニー・コルツ著、井口耕二訳『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)

ちょっとからかってみることにした。

「私もフレックスタイムにしたいと思うのだけれど、どうすればいいのかな」
「直属の上司に申請すればいいんです」
「ありがとう。月曜日にキャンプデービッドから上司が戻ってきたら、頼んでみるよ」
「認められるといいですね」

びっくりした様子もなく答えると、彼女はドアから出ていく。私は、もしかしたら嫌われたのかなと思いつつ、その姿を見送った。ともかく、フレックスタイムについては多くを学ぶことができた。私にとっては小さなことだが、あの女性をはじめとする多くの職員にとっては大きなことだ。

コリン・パウエル(Colin Powell)
1937年、ニューヨーク市生まれ。ニューヨーク市立大学卒、ジョージ・ワシントン大学大学院修了。1958年にアメリカ陸軍に入り、2度にわたってベトナム戦争に従軍。レーガン政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めた後、ブッシュ(父)政権下の1989年、米軍制服組トップの統合参謀本部議長に史上最年少で就任、湾岸戦争などの指揮を執った。2001~05年、ブッシュ(子)政権の国務長官。現在は政界を引退し、バージニア州在住。
(写真=AFP/時事通信フォト)
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