ルール8:小さなことをチェックすべし

くぎがないので 蹄鉄(ていてつ)が打てない
蹄鉄が打てないので 馬が走れない
馬が走れないので 騎士が乗れない
騎士が乗れないので 戦いができない
戦いができないので 国が滅びた
すべては蹄鉄の くぎがなかったせい

有名なこのマザーグースは、ごく小さな問題が重大事を引き起こす様をうたったものだ。

最終的な成否を左右するのは、たくさんの小さなことだ。リーダーは小さなことまで感じられなければならない――小さなことが起きる組織の最深部がどうなっているのかまで感じられなければならない。出世すればするほど、虚飾とスタッフに囲まれてほかが見えなくなる。現場でなにが起きているのか、確認する必要性が高まるのだ。

ひとつの方法は、高級感にあふれた役員専用フロアを出て、階下の現場に降りること。これから行くなどと予告をしてはならない。予告などすれば、大急ぎで掃除をされたり必死で準備をされたりして、パワーポイントのプレゼンテーションを見せられるのが落ちだ。

もちろん、十分に告知をして、まるで売り物のようにきれいな状態で受け入れられるようにしてやらなければならないこともある。しかし私は、ふらっと立ち寄り、ぶらぶらと見て歩くほうが好きだ。整備工場をのぞくなら、工作機械は汚れたままで部品がちらばっているほうがいいし、そこかしこに士官が待ち構えていて、正式な報告書にも記されているような 整備の現状について細々と説明するといったことはないほうがいい。

兵舎の視察では、寝棚と壁際のロッカー、そして、寝棚の脇に置かれた小型トランクをチェックする(今は状況が違う。最近の兵舎は学生寮のようなものになってしまった)。洗面所へも直行する。チェックするのはきれいかどうかだけではない。トイレットペーパーが不足していないか、鏡が割れていないか、シャワーヘッドがなくなったりしていないかなどもチェックする。

なにか不具合がある場合、だいたい、維持管理費が不足しているか、こういうことを調べて修正する体制ができていないか、あるいは、兵士の監督が十分におこなわれていないかだ。どこに問題があるのかを確認し、正さなければならない。