なぜユニクロは世界的ブランドになれたのか

日本の地方企業から、世界第3位の売上高を誇るアパレル製造小売業(SPA)に成長した、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。同社が世界的なブランドになった背景には、日本的なCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)の考え方があったと私は考えています。

CSVとは、社会的価値と経済的価値の両方を追求する経営戦略です。2011年にハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱し、一躍有名になりました。ただ、ポーター教授が扱う社会課題は、途上国などの低所得層(BOP)を対象としたものが中心です。CSVで取り組むべき社会課題は、それだけではないと思います。

有名な心理学者マズローの欲求段階説では、人間の欲求は図のような階層になっており、下位の欲求が満たされると、さらに上の欲求を満たそうとします。この考えに照らすと、ポーター教授が対象とする社会課題は、第1段階の「生理的欲求」や第2段階の「安全欲求」に関するものです。それらはもちろん重要な課題ですが、解決すればなくなるものです。その上の第3段階から第5段階は、最終的に「自己実現欲求」に行き着くような、ややエゴイスティックな課題が中心になります。20世紀は、この段階の、物質的により豊かになりたいという人々の欲求によって、大きく発展しました。また、中国などは、今まさにこの段階にあると言えるでしょう。

しかし、このような成長をどこまでも追い続ければ、地球はいつか破綻してしまいます。私たちはどこかの段階で、物質的な成長ではないところに豊かさを求める必要があります。マズローは、晩年に第6段階として「自己超越欲求」を提唱しています。これは、自分だけが幸せになるのではなく、周りの人たちを幸せにするような利他的な気持ちが最後に芽生えるという考え方です。