楽天は7月、スペインの名門サッカークラブ、FCバルセロナとのパートナー契約を開始しました。契約金額は4年間で約280億円。これほどの巨費を投じてまで契約を結んだ背景には、「コーズ・リレーテッド・マーケティング(Cause Related Marketing、以下CRM)」の戦略があると考えています。

楽天の三木谷浩史社長とサッカーのFC バルセロナのメッシら。(時事通信フォト=写真)

「コーズ」は耳慣れない言葉ですが、「公益性のある支援対象」を指します。NPOや公益法人、企業などの組織の場合もあれば、計画や活動の場合もあり、その範囲は社会問題、文化、芸術、スポーツなど多岐にわたります。

CRMを定義すると、「組織がコーズ支援を行い、それをコミュニケーションすることにより、マーケティング目標の達成を支援するための戦略」になります。平たく言えば「社会貢献活動をマーケティングに活かす戦略」ということです。マーケティングではないコーズ支援活動は「フィランソロピー(社会貢献)」になります。

CRMの起源は、1981年にアメリカン・エキスプレスが初めてCRMという用語を用いて行った、各地域の芸術団体の支援活動です。当時、旅行のみで用いられていたクレジット・カードを、日常生活でも利用してもらうというマーケティング目標が設定されていました。その後、同社が83年に初めて全米規模で行った「自由の女神修繕キャンペーン」が、CRMを有名にしました。これは、カードの利用1回ごとに1セント、カードの新規発行1件ごとに1ドルを、自由の女神修繕のために寄付するというものでした。その成果として、カード利用は30%増え、170万ドルが寄付されました。

この事例から、「CRM=寄付付き商品」という見方がありますが、CRMは寄付付き商品だけに限りません。また、寄付付き商品であってもマーケティングと位置づけられていないのであれば、CRMではなくフィランソロピーになります。