必要なのは「無」から「有」を生む発想力

わたしは60年間にわたって仕事人生を送ってきましたが、実は70代半ばごろから、まわりにはいいませんでしたが、いつまでいまの職を続けるか、自問自答を続けてきました。

それでも、83歳まで現役を続けることになったのは、20代、30代、40代、50代、60代、70代、80代と年齢は重ねながらも、仕事に対する向き合い方や仕事の仕方は変わることがなく、一貫して同じ力を発揮することができたからではないかと思うのです。

その力とは発想する力です。むしろ、発想力を求められる仕事が次々押し寄せてきた結果として、仕事をずっと続けることになったともいえます。

『わがセブン秘録 』鈴木 敏文 (著) プレジデント社

流通業に身を置きながら、わたしはもっぱら管理部門を担当したため、自分の手で実際に商品を開発したこともなければ、販売や営業に携わったこともなく、その分野の専門知識を特に持っているわけでもありません。それでも、長期間にわたって仕事を続けることができたのは、いまはない状態から、新しいものを生み出す発想力については、自分でも衰えを感じることがなかったからです。

わたしはもともと、何かを一生懸命に調べたり、人の話を聞いたり、本を読んだりして勉強し、いろいろなことを覚え、そこから何かを編み出すという仕事の仕方は得意なほうではありません。

ざっくばらんにいえば、かなりの面倒くさがり屋です。

一般的に、人間には、記憶力が優れ、多くの知識を持っているタイプと、記憶力が優れているというより、想像力が豊かで、新しい発想ができるタイプの2つがあります。東大をはじめとする一流大学出身者でも、同様でしょう。

わたしは昔から記憶力のほうはあまり得意ではなく、後者のタイプでした。

人々が不便に思うこと、不満に感じることを察知したら、新しいものを生み出して、不便を便利に、不満足を満足へと変えていく。というより、変えていかないと気がすまない。その発想が染みついていました。

記憶力がよく、豊富な知識を持つことで成功する人もいるでしょう。しかし、変化の激しい時代により求められるのは、発想する力です。

第2回ではその「発想する力」について私なりの見解を述べたいと思います。

※本連載は書籍『わがセブン秘録』(鈴木敏文著 取材・構成=勝見明)からの抜粋です。