トランプ大統領のリスク
トランプ大統領誕生の報道に接して、世界中に衝撃が走りました。データに基づく事前予想では、一貫してクリントン氏優位が伝えられて来ましたから当然でしょう。何が起きたのか詳細な材料が出揃うまでにはなお期間を要するでしょうが、有権者集団別の投票率が、トランプ氏優位に推移したということのようです。具体的には、北部産業州で白人の投票率が高く、黒人やヒスパニックの投票率が思ったほどには伸びなかったということです。
全国的な支持率に基づく、全国での投票総数はクリントン氏がトランプ氏に勝利しており、僅差でクリントン優位という全国レベルでの予想はある意味正しかったのですから、個別の州で選挙人を争う、ミクロな戦いにおける微妙な結果がトランプ氏勝利につながったわけです。
トランプ氏当選を受けて、当初からトランプ氏優位を予想していたとか、トランプ氏当選に伴うリスクは過大評価されていると主張する識者が続々と登場しています。少々後知恵の感があるのは否めません。トランプ氏当選の可能性と真剣に向き合わず、彼を泡沫候補扱いした多くの有識者が間違っていたのと同様に、トランプ氏当選を当然視し、そのリスクと向き合わないことも、同様に誤りであると感じます。
大切なのは、トランプ当選を「当てた」かどうかではありません。トランプ氏という毀誉褒貶を抱えた個人と、米国有権者の一大運動となったトランプ現象とを区別して論じる必要があります。実際に、トランプ氏が当選したことによる影響は、現時点では未知数です。一部の層が懸念するほど悪いことにはならない可能性もあるけれど、リスクがないとするのはあまりに早計であり、軽率な判断でしょう。