4 前日に酒を飲んで受診するとどうなる?

アルコールは、日本酒1合(エタノール22g)なら約3~4時間で代謝されます。ビールなら大ビン1本、ウイスキーならダブルの水割り1杯、ワインなら2杯弱。この程度なら前夜に飲んでも検査には直接関係がありません。

もっとも、習慣的に飲酒をしている場合は、ガンマGTP(GGT)は高く出ます。ただ、その値は肝病変の重症度や積算飲酒量と必ずしも相関していません。また飲酒習慣がなくても、脂肪肝でGGTが高く出ることがあります。GGTを低くするために禁酒というのも短絡的でしょう。

 一方、検査前に血圧を改善したり中性脂肪を減らす効果があるトクホ指定の飲み物を飲んだ場合ですが、広告を見ると継続して飲まないと意味がないようです。前夜に飲んでも数値がよくなるわけではなく、気休め程度でしょう。

5 人間ドックは普通の健診より精度が高いか

定期健診も人間ドックも検査の精度は同じです。たとえば肝臓病の検査のために、定期健診ではGOTやGPT、ガンマGTPを調べます。同項目を人間ドックで検査するときも、検査する会社や検査方法は同じ。人間ドックのほうが正確にわかるわけではないのです。

ただし、検査項目の数は人間ドックのほうが多いです。たとえば肝臓病なら、先ほどの項目のほか、胆汁の主成分の一つであるビリルビンの検査が組み込まれているし、肝臓がんの原因の85%であるB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに感染しているかも調べます。つまり検査の精度に差はなくても、より詳しく検査できるといえます。

医師の技量については一概にいえません。たしかに医師によって技量の差はありますが、患者さんがそれを事前に見極めることは困難です。大学病院の医師が小さな病院でアルバイトするケースも多く、小さな病院だからレベルが低いともいえない。その点で定期健診と人間ドックを区別する必要はないでしょう。

6 当日朝、トンカツを食べて検査するとどうなる?

人間ドックを受診するときは、10時間前から食事を抜いてもらいます。検査前に食事すると、中性脂肪や血糖の数値が高く出てしまうからです。

胃の検査にも支障をきたします。朝にトンカツを食べたら、胃の中にトンカツが残っていてよく見えないのです。胃の中は見ればわかりますから、本当は食べてきたのに「食事は抜いてきました」とごまかすのは無駄。胆のうも消化液である胆汁をしぼり出して小さくなるので、胆のうがんの発見ができません。ウソはバレるので、10時間前からの食事抜きは必ず守ってもらいたいですね。

食事と違って、飲み物は比較的自由です。砂糖の入ったものを飲むと血糖値が高く出ますが、飲んで2時間もすれば正常に戻ります。ですので、2時間以内でなければ影響はありません。

飲み物で気をつけてほしいのは、ビタミンCを多く含む清涼飲料水です。

ビタミンC入りのものをたくさん飲むと、尿の潜血検査で、本当は血が混じっているのに血が混じっていないという検査結果が出ることがあります。会社の定期健診には潜血検査がないのであまり関係ありませんが、人間ドックを受ける場合は控えたほうがいいです。

東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授 和田高士
医学博士。1981年、東京慈恵会医科大学卒業、85年同大学大学院修了。同大学第4内科講師、同大学附属病院総合診療室診療医長などを経て、2008年より現職。日本人間ドック学会理事、日本生活習慣病予防協会理事。『検査と数値を知る事典』など著書多数。
(村上 敬=構成 奈良岡 忠=撮影)
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