喜びを見つけると免疫力が高まる

ここ数年、感謝はポップカルチャーとして定着してきました。今ではあらゆる書店やアプリストア、ショップで、感謝の気持ちを伝える日記や本、商品、さらには感謝のTシャツを扱っています。

ソーシャルメディアでは「#blessed」というハッシュタグが流行っていますが、これは感謝の気持ちを表現することがいかに主流になったかを示しています。治療として感謝の気持ちを育むことは、人生の大きなことにも小さなことにも感謝することを意味します。

たとえば、劇的寛解した人たちは、治療のような大きなものから、道路脇に咲く野花や見知らぬ人の笑顔のような小さなものまで、日常生活のほぼすべてのことに感謝するように努めていると話しています。

ポジティブな感情を高めるために、毎日感謝の気持ちを持つ習慣を身につけた劇的寛解者の一人が、クリスティ・クロムウェルです。

彼女は2013年にグレードの低いグリオーマ(脳腫瘍の一種)と診断されました。腫瘍は脳幹部にあったため、医師からは手術という選択肢はないと言われます。その代わりに放射線治療と化学療法を提案されましたが、効果は保証されておらず、重い副作用の可能性がありました。

当然ながら、これは衝撃的で不穏なニュースでした。クリスティは推奨された治療をおこなわず、別の治療法を模索します。やがて彼女は、自分の置かれた状況の中でおだやかな気持ちになる方法を見つけました。

「手術不可能な脳腫瘍と診断された私は、それを取り除く手術を受けることができなかったので、ただ“それと向き合い”、折り合いをつけることを学ぶ必要がありました。

最初は簡単なことではありませんでしたし、とくに「経過観察」と言われたときはそうでした。私は自分の治癒にかかわりたかったのです。

私の好きな言葉の一つに、“Where the mind goes, the body follows(心が行くところには、身体もついてくる)”という表現があります。そこで私は、自分を幸せにし、人生により多くの喜びをもたらし、内面をポジティブにするような活動を探しました。

笑いヨガの指導者の資格を取り、娘と一緒におもしろい動画を見るようになり、幸せと平和の感覚を呼び起こす画像を作成するために多くの時間を費やすようになりました。そして、感謝する習慣を増やし、毎日、自分が置かれている状況に『ありがとう』と言うことからはじめています。

不安の中でポジティブになるのは簡単なことではありませんが、喜びを見つけることでストレスが軽減され、さらに免疫力が高まるという利点もあります」

写真=iStock.com/Motortion
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感謝の気持ちが精神と身体を癒やす

クリスティは経過観察の代わりに、劇的寛解の10の要因を生活に取り入れることにしました。現在、彼女はラディカル・リミッションの公認インストラクターとしてマサチューセッツでワークショップを率いて、ほかの患者に恩返しをしています。そして、ありがたいことにこの6年間、病状は安定しています。

しかし、感謝は治癒とどのように関係しているのでしょうか? まず、感謝の気持ちが精神と身体を癒やすという前提は、多くの研究によって裏付けられています。

たとえば、最近の臨床試験では、感謝の気持ちを引き出すために感謝の日記を2週間、毎日書き続けたところ、被験者のポジティブな感情や幸福感、生活満足度が高まり、同時にネガティブな感情や抑うつ症状を減少させることがわかりました(※8)

最もよく研究されている介入方法の一つが、「感謝リスト」です。これは、1日の終わりに感謝したいことを3~5個書き出すものです(※9)。目的を持って感謝の気持ちを毎日表す行動は、身体の健康症状や睡眠の質を改善することが科学的に証明されています(※10)

同様の研究では、感謝の気持ちを持つ傾向のある人は、そうでない人に比べて健康状態がよく、より健康的な活動(運動など)に参加していることが示されています(※11)