他者に対して無関心で一人でいることを好む
4.パーソナリティ障害
「パーソナリティ」とは、その人が長年もち続けている考え方や認知、対人関係などのパターンのことで、「人格」や「人柄」とほぼ同じ意味です。
「パーソナリティ障害」とは、大多数の人の平均的なものの考え方や感じ方、行動からみて、著しく偏った考え方や行動をとってしまう障害で、そのことにより社会不適応が生じ、本人のみならず、周りの人たちも巻き込まれてつらい思いをすることになります。
パーソナリティ障害になりやすい素因をもっている人が幼少期から思春期にかけて受けた、いじめや虐待、ネグレクトなどの経験がもととなり、偏った考え方や自己像をもつようになり、人との関わり方が不安定になってしまい、発症に至るケースが多くみられます。
パーソナリティ障害は、その傾向から次の3つに大別されます。
・変わり者タイプ……奇異な考えにとらわれたり、ひきこもりがちになったりする。
・巻き込みタイプ……自己像が不安定で、周囲の人を振り回す。
・マイナス思考タイプ……不安感や恐怖感にとらわれやすく、周囲の目を気にし、自己評価を低下させやすい。
このうち、ASDと似た症状を示すのは、「変わり者タイプ」と「巻き込みタイプ」です。変わり者タイプのなかには、他者に対して無関心で一人でいることを好み、感情表現も乏しい特徴をもつ人がいます。こうした症状がASDと似て見えることがあります。
しかし、パーソナリティ障害の変わり者タイプの人は、幼少期に親や養育者が親密な関わりをもってくれなかったことが原因となっているケースが多く、人との心温まる交流を知らないがゆえに、他者への関心が希薄になってしまうと考えられます。一方、ASDは生まれつきの障害であり、養育環境が原因で発症することはありません。
相手との関係性によって態度が変わる
また、パーソナリティ障害の巻き込みタイプでは、自分が信じたいと思った相手に対する強い「見捨てられ不安」が生じ、その人のささいな行動(約束の時間に数分遅れてしまうなど)で不安が募り、激怒したり、パニックになったりします。
信じたい相手に激しくのめり込んだかと思うと、小さなきっかけで幻滅を感じ、突然関係性を断ち切るといった極端な行為を繰り返す傾向があり、やがて、誰も信じられなくなり、人との交流を避けるようになります。このような状態が、対人関係に消極的なASDと似通って見えるのです。
しかし、巻き込みタイプも幼少期に親や養育者から十分な愛情を与えてもらえなかったことが原因で発症するケースが多く、生まれつきの障害であるASDとは異なっています。また、巻き込みタイプの場合、特定の相手や関係性において症状が現れるのが特徴的で、別の相手とは当たり障りのない関係性を維持することができます。
その点、ASDの人は、相手によって態度やつきあい方を変えることはしません。状況や場面、相手にかかわらず、同じような行動特性がみられるのが発達障害の特徴のひとつです。したがって、相手によって態度が変わったり、家庭と会社で別人のように振る舞ったりする場合は、ASDではありません。