子宮頸がん細胞診は検体採取にブレの少ない「LBC法」を
「海外の多くの国で子宮頸がんの罹患率・死亡率が減少している中で、日本では20〜40代の罹患率・死亡率が増加しています」と佐々木医師。その背景にはワクチン接種率と検診受診率の低さがあると警鐘を鳴らす。
「子宮頸がんの原因は性交渉によって多くの人が一生に一度は感染するヒトパピローマウイルス(HPV)。感染しても9割の人は免疫で排出できるが、残りの1割の人は排除できずに感染が持続します。その中の一部が『異形成』と呼ばれる前がん状態になり、これが数年〜数十年続くと、がんに進行することがあるのです。
子宮頸がん検診では、こうした異常な細胞の有無を調べますが、従来の細胞診のやり方は問題点が多いことがわかっています。専用ブラシで採取した細胞をスライドガラスに塗りつける従来法だと、ブラシに大部分の細胞が残ってしまうなどのリスクがあります。近年普及してきた液状化検体細胞診(LBC法)では、ブラシを液体保存液に入れてすすぎ、保存液ごと検査に回すので採取した細胞を無駄なく調べられる。同じ検体を使ってHPV検査(ウイルスに感染しているかどうかの検査)の追加検査もできるうえ、患者の負担も少ないため、本来ならば、LBC法で検査すべきなのです」
アメリカでは9割以上の検査がLBC法で行われているが、日本では一部の施設で導入されているのみだという。
「職域の細胞診は従来、医師ではなく自分で採取する自己採取法で行われている場合が多く、検査法もガイドラインに沿った方法でないことも少なくありません。市区町村の子宮頸がん検診でもLBC法を導入しているのは一部の自治体のみ。検診を受ける施設がLBC法を導入しているかどうかは、今後どこで検診を受けるべきかの一つの判断基準になるでしょう」
大人のHPVワクチン接種に意味があるのか
子宮頸がんに関してはHPVワクチン接種がカギとなる。日本の子宮頸がんワクチンの接種率は欧米に比べて低い。2013年4月より12〜16歳の女子を対象に定期接種化されているが、副反応の問題から「積極的な勧奨」が9年間差し控えられ、接種率は2016年度で0.3%まで低下。今年4月に積極的な勧奨が再開されたばかりだ。
「HPVの型は100種類以上が確認されており、子宮頸がんに関連する『ハイリスク型』と呼ばれるものは14種類です。中でも16型・18型の2つのタイプだけで、子宮頸がんの原因の50〜70%を占めるほど。
海外のHPVワクチンのスタンダードは子宮頸がんの9割を予防できる『9価ワクチン』ですが、日本で定期接種となっているのは16型・18型の感染を防げる『2価』と『4価』のワクチン。海外に比べれば手薄ですが、悪性度の高い16型・18型を予防する意味は大きい。まずは接種率の向上が急務といえます」
性交渉を行う前にワクチンを打つのがもっとも効果的だが、性交渉を経験した後での接種でも一定の効果は見込めるという。
「ウイルスの多くは免疫で排除できますが、その後も再感染する可能性はあるため45歳までは一定の予防効果が確認されています。ただし、すでに感染している場合の治療にはならないので、定期的な子宮頸がん検診が必要です。ハイリスク型のHPVに感染しているかどうかを調べるHPV検査を自己負担で受けることもできます。アメリカでは細胞診・HPV検査ともに陰性なら、検診は5年間隔を推奨しています。
また、子宮頸がんは喫煙が高リスク。子宮頸部の粘液からたばこ由来の発ガン性物質が高濃度で検出されます。通常、HPVに感染してがん化する場合10〜20年かかりますが、喫煙者は半分の期間でがん化することがわかっていますから、禁煙を強く勧めます」