「あなたにとってもいいことだと思うよ」
いい子症候群が怖いのは、いい子症候群の子どもたちの多くが、いい子症候群であることに無自覚だという点。
わたしが過去に出会った女性を例にしましょう。彼女は、母親からこんな言葉をかけられ続けて育ちました。
「お母さんは英語をきちんと習いたかったから、あなたにはそうしてほしい」
「お母さんは、本当は学校の先生になりたかったから、あなたにはそうなってほしい」
「そうするのが、あなたにとってもいいことだと思うよ」
彼女は、母親の期待にしっかり応えて英語の教師になりました。そして、それが母親のためにやってきたことなんて思うこともなかったし、自分にとっての幸せだと信じて疑うこともありませんでした。
ところが、35歳くらいになったときに、突然、「わたしの人生って誰のものなのか」「わたしの人生は空っぽじゃないのか」という思いに襲われて、心が不安定になったのです。
いい子症候群の子どもは「アダルトチルドレン」になる
彼女はもう30代でしたから、厳密にいえばいい子症候群とはいえません。
いい子症候群の子どもは、大人になったときに、「アダルトチルドレン」と呼ばれるようになります。アダルトチルドレンとは、子どもの頃に自分らしくさせてもらえない体験を重ねることで、大人になってからも、生きづらさを抱えてしまう大人のことです。
アダルトチルドレンの人たちはたくさんの問題を抱えています。
例に挙げた女性のように、人生そのものに対して空虚感を抱いてしまうこともそう。
また、職場や家庭などの人間関係においても多くの壁にぶつかります。
自分がなにをどうしたいのかということがわからないため、「わたしはこうしたい」という交渉ができないからです。そうして、我慢に我慢を重ねて不満を限界までため込んだ揚げ句に、「わたしを大事にしてくれない!」と怒りを爆発させるということになる。
でも、相手からすれば、自分のことをなにもいわない人の気持ちなんてわかりようがありませんよね。