人間関係に悩んだときはどうすればいいか。精神科医の藤野智哉さんは「周囲の人の感情に影響されたり、自分の感情を出すのをためらったりするのは、『自分と他者の間にある境界線』があいまいになっているせいかもしれない」という――。

※本稿は、藤野智哉『人間関係に「線を引く」レッスン 人生がラクになる「バウンダリー」の考え方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

デスクライトはついたまま、書類の山の間で机に突っ伏して仮眠をとっている疲れた女性
写真=iStock.com/onuma Inthapong
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「他人に引きずられてしまう人」の悩み

最近、あなたはこんなことに悩んでいませんか?

断るのがなんとなく苦手
仕事も家庭も忙しすぎて、いつも時間がない
仕事の連絡が休日にもあり気が休まらない
つい意見の強い人に押しきられがち
愚痴につきあったり、相談されることが多い
待たされたり、相手に時間を合わせてしまう
「理不尽」と思いつつ、結局、我慢してしまう
「あなたのためを思って」の言葉にモヤモヤする
不機嫌な人がいると、自分までイヤな気分になる
期待に応えないと、なんだか罪悪感がある

そんなあなたに足りないのは、人間関係に「線を引く」ことかもしれません。

どういうことでしょうか?

人間関係に「線を引く」と書きましたが、この「線」は心理学用語の「バウンダリー」という考え方がもとになっています。

「バウンダリー」とは、「自分と他者の間にある境界線」のことです。

もう少し詳しくいうと、「『どこまで相手と関わるか』『どこから自分を守るか』を自分が決めるための心理的な境界線」を意味します。

「できない」と素直に伝えればいいが…

人にはそれぞれ「自分の領域」があります。

そしてその自分の領域は、尊重されてしかるべきものです。

けれども、本来なら誰からも侵入されないはずの「自分の領域」に、気づいたらずかずかと入ってこられてしまうケースは少なくありません。

それが「バウンダリーを越えられる」ということです。

そして、バウンダリーを越えられたら、自分を守るために、「それ以上はやめてください」と言っていいのです。

たとえば、仕事上でよくあるのが「時間」のバウンダリーです。

バウンダリーを適切に引けている人の場合、忙しい時期に他の仕事をふられたら、

「今は仕事がいっぱいで、引き受けられそうにありません。もし、どうしても私がしたほうがいいというなら、1週間後なら引き受けることができます」

と自分で「できる」「できない」の線引きをし、相手に素直に伝えて調整してもらうことができます。